無印は、このサブスクリプション拡大を、「事業モデルの転換」とし、以下のように説明している。
「家具は買って使って要らなくなったら捨てる」という事業モデルから、「家具は人から人へとずっと引き継がれて使い続けられる」という事業モデルに転換する。
(2023年8月期 第1四半期決算説明会資料)
「事業モデルの転換」というよりも、「社会構造を変革」する啓蒙活動のような印象を受ける。もとより、崇高な経営理念をもち、環境意識の高い無印だからこその施策だろう。一方、収益面での思惑も透けて見える。
サブスクリプションのメリットは2つ。ひとつは、安定した固定収入が期待できること。特に、買換えが面倒な家具の場合、契約満了後の「延長」や、「買取」(すなわち分割購入)になる可能性が高く、高収益が期待できる。
もうひとつは、値上げのステルス性が高いこと。つまり「値上げがバレにくい」のだ。
無印は、「定番で長持ちする『本物』の家具の新規開発を行う」とも述べている。品質も上がるが、価格も上がる。痛みを感じさせることなく、徐々に値上げできるサブスクリプションは、高価格化の布石としては有効だろう。
無印良品とは設立当初「わけあって、安い」というキャッチコピーを使っていた無印。
現在は、
「 これ『が』いい、 ではなく、これ『で』いい」
を用いている。
このキャッチコピーを、無印ウェブサイトでは以下のように解説している。
無印良品が目指しているのは「これがいい」ではなく「これでいい」という理性的な満足感をお客さまに持っていただくこと。つまり『が』ではなく『で』なのです。しかしながら「で」にもレベルがあります。無印良品はこの『で』のレベルをできるだけ高い水準に掲げることを目指します。
(無印良品ウェブサイトより )
『で』のレベルをどこに置くか。それにより無印良品は、「有印不良品」にも「無印優良品」にもなりうる。
無印良品が「無印良品」のまま利益を回復できるか。それは『で』のさじ加減しだいだろう。