韓国は日本の隣の国で、文化的、経済的にも交流が多い。今回は、韓国の政治・経済ニュースをまとめていこう。

大統領経験者は悲惨な末路を辿る?

韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が2022年5月に発足した。5年ぶりの保守政権だ。韓国では、政権が代わるたびに前任の大統領が逮捕されたり自殺に追い込まれたりと、悲惨な末路をたどっている。

韓国で目下の焦点は、尹氏の前任者、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領に捜査当局の手が及ぶかどうかだ。文氏をめぐっては、政権時の不当人事に関する疑惑や選挙に関する疑惑が次々と浮上しており、文氏に対する風当たりは強まっている。

もっとも、文氏はこうした事態に発展することを見越して、先手を打っていた。大統領在任中に、検察が持つ強力な捜査権を縮小する法改正を、当時の与党「共に民主党」が強行していたのだ。改正法の施行は2022年9月に迫っており、検察は追及の手を強めているとされる。

大統領経験者の逮捕といえば、朴槿恵(パク・クネ)元大統領が記憶に新しい。朴氏は職権乱用などの罪で逮捕・起訴され、懲役20年の実刑が言い渡された。朴氏は2021年12月31日付で恩赦が与えられ釈放されたが、朴氏の父で大統領を務めた朴正煕(パク・チョンヒ)氏は部下に暗殺されたことで有名だ。

韓国版CIAのトップ2人が職権乱用罪で告訴

韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権が発足してまもない2022年7月6日、 “韓国版CIA”元トップの2人告発された。

2人は文在寅(ムン・ジェイン)前政権時代に国家情報院(韓国版CIA)のトップを務めた徐薫(ソ・フン)氏と朴智元(パク・チウォン)氏。

徐薫(ソ・フン)氏は、国家情報院法違反(職権乱用罪)と虚偽公文書作成罪など。徐氏は、2019年に北朝鮮住民の2人が乗る漁船が韓国軍に拿捕され、住民が北朝鮮に送還された事件について行われていた合同調査を、早期に強制終了させた疑いをかけられている。

朴智元(パク・チウォン)氏は、国家情報院法違反(職権乱用罪)、公用電磁記録等の損壊罪など。朴氏は、2020年9月に北朝鮮軍が黄海上で韓国の男性公務員を射殺した事件について、諜報関連の報告書などを無断で削除した疑いをかけられている。

なお、朴氏は告訴の内容を「事実無根」と反論している。

2人の“韓国版CIA”(国家情報院)元トップの告訴が相次いだ背景には、5月の政権交代を機に現政権による前政権時代の不正疑惑捜査が本格化したことが挙げられる。

徐氏、朴氏、いずれも前政権時代にトップを務めていた。そこで、現政権は前政権における重要人物2人の不正疑惑に目を付け、彼らの告訴を今後の捜査の弾みにする狙いがあるとみられる。

告訴された元トップの裁判の行方はもちろん、今後の不正捜査の行方からもしばらく目が離せない状況が続くだろう。

総工費約10兆円「日韓トンネル」は実現するのか

現在の「日韓トンネル」構想の基になったのは、1981年に韓国・ソウルで開かれた「科学の統一に関する国際会議」。この中で、同会議創設者で、世界平和統一家庭連合(統一教会)創立者の文鮮明氏が「アジア大ハイウェイおよび日韓トンネル構想」を提唱した。

これを受けて1983年、東京に「日韓トンネル研究会」が設立された。同研究会のウェブサイトによると、日韓トンネルは佐賀県唐津市から対馬を経て韓国南部に位置する韓国第2の都市・釜山市に至る。総延長距離は270キロで、このうち海底を通るのは150キロ。着工すれば約10年で完工し、総工費は約10兆円に及ぶという。

日本国内を代表する海底トンネルである「東京湾アクアライン」は、延長が約15キロ(このうち海底部分は約10キロ、橋部分が約5キロ)で、総工費は約1兆4,400億円。構想中の日韓トンネルの延長は東京湾アクアラインの18倍、総工費は7倍に当たる規模の事業となっている。

もっとも、この計画の最大のネックは巨額の総工費だ。十分な資金を確保できるかどうかという点ももちろん、それだけの投資に見合ったリターンがあるのか疑問が残る。

この点、2018年に西南学院大学の野田順康教授が公表した調査では、英仏トンネルを参考に終始状況を試算すると、物流面だけで年間2,253億円もの営業利益が得られるとされた。さらに韓国南部と九州・中国地方が日帰りで行き来できる時間距離になるため、新たな観光需要も生まれると期待できるとされた。

その上で、建設費10兆円のうち4兆円を出資でまかない、着工から3年後と6年後にそれぞれ3兆円ずつ融資を受けたと仮定すると、供用開始から35~50年後に完済すると予想している。

昨年「日韓トンネル」や、そして安倍元総理の衝撃の銃撃事件などで大きく話題となった世界平和統一家庭連合だが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権下でどのような動向を辿るのか気になるところだ。

日韓関係の今後は

地理的にも文化的にも近い韓国は、政治や経済の分野でも深い関わりがある。歴史的背景などからお互いをよく思っていない国民も少なからずいるため、どのように関わっていくのかはセンシティブな問題だ。今後の両国の関係や政府の動きにも注目していきたい。

文・MONEY TIMES編集部