バイデン米大統領、ショルツ独首相、マクロン仏大統領、ジョンソン英首相、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長、欧州連合(EU)のフォン・デア・ライエン委員長ら欧米指導者は同日、ロシア軍のウクライナ侵攻を激しく非難し、対ロシア制裁の一層の強化を発表する一方、ウクライナ国民に連帯を表明した。ただ、米国を含むNATO軍はロシア軍の侵攻に守勢を余儀なくされるウクライナ政府軍への直接の軍事支援は考えていない。ロシア軍との正面衝突で世界大戦が勃発する危険が出てくるからだ。

プーチン大統領はNATOが軍事行動に出ないことを知っているだけに、親ロ派勢力の拠点ウクライナ東部だけではなく、首都キエフを制圧し、ウクライナに親ロ派政府を樹立、同国をその影響圏内に留めさせたい意向ともいわれる。同大統領は、「ウクライナ政府軍は武器を下ろせ。抵抗すれば武力で制圧する」と警告を発している。

ウクライナ政府軍はロシア軍の侵攻を止めることはできないだろう。NATO軍はバルト3国、ルーマニアなど加盟国の安全強化に忙しく、常任理事国にロシアと中国が入っている限り、国連に実質的な活動は期待できない。状況はプーチン氏に有利に動いている。

国際社会から批判を受け、経済活動に大きな支障をもたらす制裁を甘受してもウクライナ侵攻を決断したプーチン氏の蛮行を止めることは難しくなってきた。それだけに、ロシアのウクライナ武力侵攻の動向を見守っている中国共産党政権の出方に注意が必要となってくる。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年2月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

文・長谷川 良/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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