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国税庁の通達により、「副業節税」は大ピンチ
正しくおトクに副業収入を節税するための4つのポイント

国税庁の通達により、「副業節税」は大ピンチ

以上のように、副業を活用した節税には大きな問題がありました。

こうした事態を前に、国税庁は“「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)”を発表。詳細な解説はしませんが、「副業収入が300万円を超えない場合、原則は所得区分を雑所得と判断する」という通達が出されました。つまり、副業収入を事業所得とみなす、損益通算のスキームが改めて否定されたのです。

しかし、上記の「副業節税つぶし」と思われる通達は、普通に副業をしている人にも大きな影響がありました。そこで国税庁に非難が殺到し、上記の通達は「必要な帳簿などの記帳・保存をしている場合、原則は所得区分を事業所得と判断する(=収入基準を必要としない)」という形に変更されました。

“副業節税”はキケン? 会社員が経費と青色申告で正しく節税する方法【FP監修】
(画像=▲出典:国税庁、『Workship MAGAZINE』より引用)

こうして、普通に副業をしている人は、今までグレーだった「副業の事業所得算入」がほぼ認められ、青色申告の特典などを利用できるようになったのです。

ところが、国税庁はこの通達を出すと同時に、帳簿を記帳・保存していても雑所得と判定されるケースがある、2つの例外パターンを公表しました。具体的には以下の通りです。

  1. 収入が少ない場合
    たとえば、副業の収入金額が、例年300万円以下で主な収入(給与収入)に対する割合が10%未満の場合は、「収入が少ない場合」に該当すると考えられます。
    ※「例年」とは、だいたい3年程度の期間。
  2. 活動に営利性が認められない場合
    例年赤字で、かつ赤字を解消するための取組みを実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます。
    ※「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動などを実施していない場合をいいます。 (参考:国税庁)

つまり、「収入が少ない人」「毎年赤字の人」は帳簿を記帳・保存していても個別の事例をもとに判断される(=雑所得として認定される可能性が高い)と通達されたことを意味します。

ここまでの内容を理解できた方なら分かると思いますが、上記の例外は完全に「副業節税つぶし」と言って差し支えないでしょう。国税庁も神経をとがらせており、今後は摘発が加速するリスクがあります。

正しくおトクに副業収入を節税するための4つのポイント

ここまで「副業節税」のスキームと問題点、法令解釈の変更を見てきました。

しかし、誤解しないでいただきたいのは、あくまでほぼ赤字の副業を使って本業の収入を節税する「副業節税」がNGとなっただけに過ぎないこと。

逆に、それなりの金額を稼ぎ、きちんと帳簿を保存している人の副業で得た所得自体は、むしろ節税しやすくなっているといえます。

以下では、副業で得た所得を正しく節税するためのポイントを解説します。

ポイント1. 青色申告特別控除を利用する

先で見た通達により、帳簿を保存していれば事業所得として認められる、つまり青色申告を利用できる可能性が高いことがわかりました。となれば、青色申告を利用しない手はないでしょう。

青色申告の最大65万円控除、少額資産の一括経費計上などは節税効果が大きく、ぜひ活用したいものです。

青色申告は帳簿付けの方法が厳格で、多少の手間はかかるものの、国税庁が「キチンと帳簿を記帳・保存することが、事業所得と雑所得の線引き基準」と宣言している以上、帳簿をしっかり付けるに越したことはありません。

青色申告もしっかり帳簿付けした人のための特典なので、副業の事業所得認定基準を守るための帳簿付けが、自然と青色申告につながるといえます。

ポイント2. 経費をしっかりと計上、申告する

副業で得た収入もフリーランスが本業で得た収入と同じように、事業にかかった経費を計上し、収入から差し引くことで所得が減り、節税につながります。

副業にかかった経費は少額になることも多いと思いますが、たとえば副業を「自宅の仕事部屋で行った」場合、自宅の家賃や光熱費、ネット代などの一部を経費に計上できる可能性があります。

以下では、経費となる可能性がある費用の一例を紹介します(全額経費にならない費用も含む)。

  • 事業にかかる仕入れ費用
  • パソコンやプリンターなどの電子機器代
  • プリンターのインクや文房具などの消耗品代
  • 副業に関係する書籍・雑誌・新聞代
  • 事業に関係のある勉強会への参加費
  • 仕事に関わる交通費
  • 打合せにかかった飲食代
  • 営業先や取引先へのお土産代
  • 自宅の家賃や水道光熱費
  • 仕事にも使う自家用車にかかる費用
  • 個人と家庭で兼用して使っている固定電話やインターネット料金、スマホ代

ポイント3. ふるさと納税やiDeCoを利用する

ふるさと納税やiDeCoは副業をしていない会社員でも活用できる制度ですが、副業によって所得が増え、納税額も増えてしまった場合、活用効果がより大きくなります。(どちらも限度額はあります)

ふるさと納税で支払った費用は「寄付金控除」、iDeCoで支払った費用は「小規模企業共済等掛金控除」として控除が受けられるので、増えてしまった納税額を圧縮できます。

どちらも単に税金を減らすだけでなく、ふるさと納税の場合は「返礼品」が、iDeCoの場合は「非課税の老後資金」が得られるため、ぜひ利用したい制度です。

ポイント4. どうしても赤字になってしまったときは、遠慮せず損益通算を

ここまでの説明から「副業で赤字を出しても節税にはならなくなったんだ!」と思っている方もいるかもしれません。

たしかに副業で赤字を出しての節税はほぼ否定されましたが、国税庁の通達を見ると「3年程度あんまり売上が出ておらず」「3年程度赤字改善の取り組みがない」場合は基本的にNGと言っているだけ。

つまり、「順調に副業をしていたのに、何かしらの事情で1年だけ赤字になってしまった……」というようなイレギュラーの損益通算は否定されていません。

やむを得ない場合は損益通算することでかなり節税効果が見込めますので、遠慮せず実行して事業を立て直しましょう。