ネット銀行や店舗型銀行が提供するネットバンキングは便利だが、店舗での取引とは異なるセキュリティリスクが存在する。ネットバンキングを利用する際のセキュリティリスクは、どのように対策すべきだろうか。主なネット銀行のセキュリティ対策も比較してみよう。

目次
1.ネット銀行(ネットバンキング)の代表的なセキュリティリスク
2.ネット銀行の利用で守るべき6つのセキュリティ対策
3.ネット銀行が提供する主なセキュリティ対策7つ
4.主なネット銀行のログインのロック、取引認証、不正検知を比較
5.ネット銀行はセキュリティ対策を正しく行うことで安心して利用できる

1.ネット銀行(ネットバンキング)の代表的なセキュリティリスク

ネット銀行などのネットバンキングでのセキュリティリスクには、どのようなものがあるのだろうか。代表的なセキュリティリスクに、フィッシング詐欺やクラウド上のデータへの不正アクセスがある。

フィッシング詐欺とは、犯罪者が利用者を偽のWebサイトへ誘導し、口座情報やパスワード・認証番号などを盗み、不正取引を行うことだ。

ネット銀行のセキュリティリスク1,……偽のメールやSMSによるフィッシング詐欺

犯罪者が金融機関になりすまして、偽のメールやSMS(ショートメール)を送信することがある。メールのリンク(URL)をクリックすると、金融機関のWebサイトに似せた偽サイトに誘導される仕組みだ。

偽サイトで利用者が口座情報やパスワード、認証番号などを入力すると、それらが盗まれてしまう。

ネット銀行のセキュリティリスク2,……コンピューターウイルスによるフィッシング詐欺

コンピューターウイルスによるフィッシング詐欺もある。ウイルスは悪意のあるメールの添付ファイルを開いた際や、悪意のあるWebサイトを閲覧した際などに感染する。

利用者が金融機関のWebサイトを開いた際にウイルスが偽の画面を表示し、利用者がその画面に入力した口座情報やパスワードなどの情報を盗む手口だ。

ネット銀行のセキュリティリスク3……クラウドサービスへの不正アクセス

利用者がネットバンキングの口座情報やパスワードなどをクラウドサービスに保存している場合も、注意が必要だ。

犯罪者がクラウドサービスへ不正にアクセスし、口座情報やパスワードなどを盗むことがある。

2.ネット銀行の利用で守るべき6つのセキュリティ対策

上記のセキュリティリスク以外にも、ネットバンキングにはさまざまなリスクがある。ネット銀行などのネットバンキングで利用者が行うべきセキュリティ対策を確認しておこう。

守るべきセキュリティ対策1,……パスワード・暗証番号は第三者に推測されないようにする

パスワードや暗証番号は、生年月日や電話番号、クルマのナンバーなどの他人が推測しやすいものを使用しないようにする。

また、パスワードを他のサービスと共通にすることも避けたい。他のサービスから漏洩したパスワードが、ネットバンキングで悪用されることがあるからだ。

このセキュリティ対策はネットバンキングに限らず、銀行のキャッシュカードやクレジットカードの暗証番号にも同じことが言える。

守るべきセキュリティ対策2……不審なWebサイトやメール添付ファイルを開かない

悪意のあるWebサイトにアクセスすると、コンピューターウイルスに感染する可能性がある。不審なWebサイトにはアクセスしないようにしてほしい。

特に、金融機関を装ったメールに気をつけたい。そのようなメールのリンクは、クリックしてはならない。ネットバンキングへのアクセスは、ブックマークなどを利用しよう。

メールのリンクだけでなく、添付ファイルにも注意したい。知らない相手からのメールの添付ファイルは、開かず削除すべきである。

知り合いからのメールの添付ファイルであっても、相手のパソコンがウイルスに感染していれば、その添付ファイルもウイルスに感染している可能性がある。

添付ファイルを開く必要がある場合は、相手に安全を確認してからにしよう。

守るべきセキュリティ対策3……ウイルス対策ソフトを導入する

前述のとおり、コンピューターウイルスはWebサイトや電子メールの添付ファイルなどからパソコンやスマートフォンに侵入する。

これを防ぐために、パソコンはもちろんのことスマートフォンにもウイルス対策ソフトを導入しておきたい。

守るべきセキュリティ対策4……セキュリティアップデートを最新に保つ

OSやブラウザのセキュリティアップデートは、最新に保たれるように設定しておこう。ウイルス対策ソフトのアップデートも同様だ。

これらを旧バージョンのまま使っていると、ウイルス感染リスクが高まるので注意したい。

守るべきセキュリティ対策5……フリーWi-Fiでネット銀行を利用しない

フリー(無料)Wi-Fiはセキュリティ対策が不十分であり、通信内容を傍受される可能性があるためセキュリティリスクが高い。

Wi-Fiの自動接続をオンにしていると、知らないうちにWi-Fiに接続されていることがあるため、自動接続はオフにしておこう。

出先でネット銀行にアクセスする際は、携帯電話会社の通信網(4G/LTEや5Gなど)を利用すべきだ。

守るべきセキュリティ対策6……不特定多数の人が利用するパソコンではネット銀行を利用しない

インターネットカフェや公共施設など、不特定多数の人が利用するパソコンでネット銀行を利用してはならない。

そのようなパソコンは、悪意のある人が不正なプログラムを設定していたり、ウイルスを仕込んでいたりする可能性があるからだ。

出先でネット銀行にアクセスする際は、自分のパソコンやスマートフォンを利用するようにしよう。

3.ネット銀行が提供する主なセキュリティ対策7つ

不正利用を防止するために、ネット銀行はさまざまなセキュリティ対策を提供している。

ログインする時に、パスワードや暗証番号などを数回間違えるとロックされるのはその一例だ。それ以外で、ネット銀行が提供する主なセキュリティ対策を7つ紹介しよう。

ネット銀行のセキュリティ対策1……ログインのロックにより不正ログインを防ぐ

ネット銀行によっては、スマートフォンアプリを操作することでネットバンキングのログインをロックできるものがある。

ネットバンキングを使うときだけロック解除すれば、不正ログインのリスクを最小限に抑えることができる。

ネット銀行のセキュリティ対策2……取引認証による不正取引の防止

振込などの取引の認証方法は、ネット銀行によって異なる。専用のトークン(小型の電卓のようなもの)やメール、スマホアプリによるワンタイムパスワード認証や、スマホアプリによる取引ごとの認証などがある。

毎回同じ取引パスワードを使う認証では、ログイン情報と取引パスワードが盗まれると不正送金などの被害にあう可能性が高くなる。

毎回違うパスワードが発行されるワンタイムパスワード認証や取引ごとの認証であれば、悪意のある人がネットバンキングにログインできたとしても、不正送金をするのは難しい。

ネット銀行のセキュリティ対策3……不正を検知した取引を利用者に通知

ネット銀行によっては、第三者が操作した可能性がある取引などを検知し、利用者に通知することがある。

例えば、住信SBIネット銀行では振込モニタリングを行っており、第三者による操作の可能性があれば利用者に連絡する。また、利用者がログインしたパソコンのウイルス感染もチェックしている。

普段と違う環境からのログインがあった場合、メールで通知してくれるネット銀行もある。

ネット銀行のセキュリティ対策4……振込・デビット・ATMなどの限度額設定

振込やデビット、ATMの利用限度額を設定することで、万が一悪用されても被害額を抑えることができる。利用限度額は、1日あたりの金額を設定するのが一般的だ。

ネット銀行のセキュリティ対策5……ソフトウェアキーボードの利用

パソコンでパスワードや暗証番号を入力する際、ソフトウェアキーボードを利用するほうが安全性が高い。ソフトウェアキーボードを利用すると、キーボードの操作履歴がパソコンに残らないからだ。

ソフトウェアキーボードの利用は、キーボードの入力情報を記録してパスワードなどを盗む悪意のあるソフトウェアに対する防御策になる。

ネット銀行のセキュリティ対策6……自動ログアウトによる不正操作の防止

ネットバンキングにログインした後、一定時間操作を行わないと通常は自動的にログアウトする。ログインした状態で離席した際に、不正に操作されるリスクを抑えるためだ。

自動ログアウト機能があるとしても、利用が終わったら自らログアウトするようにしたい。

ネット銀行のセキュリティ対策7……合言葉認証による不正ログインの防止

合言葉による認証は、一般的にログイン時にパスワード認証に加えて利用される認証方法である。合言葉による追加認証は、不正ログインを防ぐのに有効だ。

合言葉認証は新たなデバイスからのログインなど、ネット銀行のシステムが合言葉認証を必要だと判断した場合に利用される。

4.主なネット銀行のログインのロック、取引認証、不正検知を比較

ネット銀行を選ぶ際は、そのセキュリティ対策を確認しておきたい。

前述のネット銀行の7つのセキュリティ対策のうち、銀行による違いが大きい「ログインのロック」「取引認証(ワンタイムパスワード含む」」「不正検知」について比較してみよう。

ネット銀行 ログイン
のロック/
制限
取引認証
(ワンタイム
パスワード
認証を含む)
不正検知
住信SBIネット銀行 スマホによる
ロック解除
スマホによる
取引認証
不正取引や
ウイルス感染の検知
auじぶん銀行 スマホまたは
携帯電話による
ロック解除
スマホによる
取引認証
不正取引検知
楽天銀行 ・パソコンからの
ログイン時にワンタイム
認証ができる
・モバイル端末からの
アクセス時に制限ができる
メールによる
ワンタイム
パスワード認証
デビットカード
不正利用検知
GMO
あおぞら
ネット銀行
取引認証
失敗時の
自動ログイン
ロック
・スマホおよび
メールによる
ワンタイム
パスワード認証
・スマホおよび
メールによる
別デバイスでの
トランザクション
認証
ジャパンネット
銀行
トークンによる
ワンタイム
パスワード認証
利用者パソコンの
ウイルス検知
ソニー銀行 トークンまたは
スマホによる
ワンタイム
パスワード認証
デビットカード
不正利用検知
イオン銀行 アプリまたは
メールによる
ワンタイム
パスワード認証

各ネット銀行のセキュリティ対策を紹介しよう。

住信SBIネット銀行……ハイレベルなセキュリティ対策を誇るネット銀行

住信SBIネット銀行は、国内のネット銀行でトップレベルのセキュリティ対策を行っている。ログインのロックや取引認証は、スマートフォンを操作することでできる。

不正取引や利用者のパソコンのウイルス感染を検知したり、いつもとは異なる環境からのログインを利用者に通知したりするなど、セキュリティ対策が充実している。

auじぶん銀行……スマーフォンによる取引認証も可能

auじぶん銀行は、auと三菱UFJ銀行が共同で設立したネット銀行だ。KDDIグループだけに、スマホひとつですべての取引を完結できるほど、アプリの機能が充実している。

スマホや携帯電話でネットバンキングのログインをロックするインターネットバンキングロックができ、スマートフォンによる取引認証も利用できる。

楽天銀行……スマートフォンなどのモバイル端末からのログイン制限

楽天銀行は、給与の受取などで楽天スーパーポイントを貯めたり、デビットカードの支払いに充てたりすることができる。

パソコンからのログイン時にワンタイム認証を利用でき、スマートフォンなどのモバイル端末からのログイン制限によって認証を強化できる。

GMOあおぞらネット銀行…ワンタイムパスワードなど豊富な認証方法

GMOあおぞらネット銀行は元信託銀行であり、ネット銀行事業は2018年に開始された。振込手数料などに、後発ならではのメリットがある。

取引認証を一定回数失敗すると、自動でログインロックがかかる。取引認証はワンタイムパスワード認証や認証アプリによる認証など、さまざまな認証方法を用意している。

ジャパンネット銀行……ウィルス感染時には電話による連絡

ジャパンネット銀行は、日本初のインターネット専業銀行として2000年に設立。サポートが充実しており、チャットやLINEアプリなどを利用できる。

取引認証はトークンによるワンタイムパスワード認証を利用でき、利用者のパソコンのウイルス感染を検知した場合は、電話による連絡がある場合がある。

ソニー銀行……不正通知による利用制限で高いセキュリティ

ソニー銀行は、米ドルなどの外貨預金や外貨の利用が便利なネット銀行だ。Sony Bank WALLETは、11通貨に対応するVisaデビット付きキャッシュカードである。

取引認証では、スマートフォンアプリまたはトークンによるワンタイムパスワード認証などを利用できる。Sony Bank WALLETは、不正検知による利用制限によってセキュリティを高めている。

イオン銀行……通帳アプリやメールを活用した認証方法

イオン銀行では、イオンのクレジットカードや電子マネーWAONなどを利用するとイオン銀行MYステージが上がり、普通預金金利や振込手数料などが優遇される。

取引認証では、通帳アプリまたは電子メールを利用する方法でワンタイムパスワード認証を利用できる。

5.ネット銀行はセキュリティ対策を正しく行うことで安心して利用できる

ネット銀行などのネットバンキングは非常に便利だが、店舗での取引よりもセキュリティに注意しなければならない。銀行に行く手間が省ける代わりに、多くのセキュリティ対策が必要になるという考え方もできる。

行うべきセキュリティ対策は多いが、適切に行えばネット銀行を安心して利用できる。

万が一不審なWebサイトに口座情報やパスワードなどを入力してしまった場合や、被害にあった場合には、すぐにそのネット銀行へ連絡してほしい。

 

松本雄一
執筆・松本雄一
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。

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