低金利時代において、外貨預金は金利以外の利益が見込めて、通貨の分散投資ができるのが魅力だ。一口に外貨といっても、その種類は多い。初心者が選ぶべき通貨、より大きなリターンを狙える通貨は何だろうか。外貨預金の概要と各通貨の特徴について解説しよう。 

目次
1.外貨預金とは
2.外貨預金でおすすめの通貨8選
3.外貨預金の4つの注意点

1.外貨預金とは

まずは、外貨預金の基本について押さえておこう。

外貨預金とは海外通貨で行う預金

外貨預金とは、円以外の通貨で行う預金のことだ。米ドル・ユーロ・豪ドル・ニュージーランドドルといった外国の通貨を選び、自分の外貨預金口座に入れる。

外貨預金は通貨が異なるだけで、基本的な仕組みは円預金と同じだ。円を外貨に交換してから預け入れるのが一般的で、預け入れた元本に対して一定期間ごとに利息がつく。利息も外貨で支払われる。外貨預金は、以下の種類に分けられる。

  • 外貨普通預金……いつでも引き出せる。変動金利。
  • 外貨定期預金……1ヵ月、3ヵ月、1年などの一定期間預ける。固定金利。
  • 外貨積立預金……毎月自動的に円口座から外貨口座に入金する。

外貨預金は円貨預金より金利が高め

外貨預金の仕組みは円預金と同じだが、特徴は大きく異なる。

まず、金利が違う。通貨にもよるが、一般的に外貨預金は円貨預金より利率が高めに設定されている。円預金金利はメガバンクの普通預金で0.001%、定期預金で0.002%と、金利による利益はほとんど見込めない。外貨預金は、例えば新生銀行の米ドル1年定期の金利は0.4%、大和ネクストの米ドル1年定期は0.5%だ(2020年8月18日現在)。

「為替差益」のある外貨預金は「投資」の色合いが強い

「利息だけでなく為替差益による利益も得られる」ことも外貨預金の特徴であり、魅力だ。為替差益は、預入時よりも外貨が円安に動いた場合に発生する。

例えば1ドル=100円の時に預け入れ、その後1ドル=110円に変動した場合、1ドルあたり10円の差益を得られる。元本が100万円なら10万円の利益だ。金利だけでは物足りない時代だが、外貨預金は為替差益を狙えるため、預金でありながら投資商品としての側面がある。ただし為替は円高に振れることもあり、その場合は為替差損が発生する。

2.外貨預金でおすすめの通貨8選

どの通貨を選ぶかによって、金利や為替変動は大きく変わる。比較的安定的な通貨もあれば、経済情勢や政治情勢に左右されやすい不安定な通貨もある。それぞれの通貨の特徴を把握して、自分に合ったものを選びたい。

米ドル(USD)……流通量世界一の基軸通貨

米ドル(USD)は、言うまでもなく世界有数の経済大国であるアメリカ合衆国の通貨だ。貿易や投資の決済のために世界中で使われ、流通量は世界一である。国際通貨の中でも中心的な位置づけであることから「基軸通貨」と呼ばれている。

紛争や経済危機などの際にリスク回避目的で買われる「有事のドル買い」が有名だが、米ドル/円相場では円高ドル安になる傾向があるので注意したい。最近は中国経済の台頭やITバブル後の米国の財政悪化から、米ドルの影響力は下がりつつあると言われているが、米ドルに代わる基軸通貨は現れていない。初心者や安全重視の投資家向きの通貨と言えるだろう。

ユーロ(EUR)……米ドルに次ぐ世界2位の取引量

ユーロ(EUR)は、EU (欧州連合)の単一通貨を目指して1999年1月に導入された。19ヵ国がユーロを法定通貨としている(2020年9月時点)。ユーロの取引量は、米ドルに次いで世界2位。導入国の中でもドイツとフランスの経済状況に大きく影響される。一時は米ドルの代替通貨として1ユーロ=170円までユーロ高が進んだが、ギリシャ債務危機をはじめとする欧州金融不安を受けて、2012年には1ユーロ=100円まで下げた。その後やや持ち直したものの、英国のEU離脱やEU国の経済格差問題など、注目すべき課題が存在する。円や米ドルに次ぐ分散投資先として有力な通貨だ。

英ポンド(GBP)……強い影響力を持つかつての世界の基軸通貨

英ポンド(GBP)は、第一次大戦までは世界の基軸通貨として存在し、現在も金融証券分野において強い影響力を持つ。

ロンドンは、世界屈指の金融センターとして知られている。ユーロ発行後も自国通貨のポンドを維持しており、欧州金融不安の間も底堅く推移した。2015年には1ポンド=190円前後をつけている。

しかし、その後英国の欧州離脱問題が浮上すると1ポンド=140円前後まで急落した。英ポンドは、しばらく離脱協議の動向の影響を受けそうだ。変動幅が大きいので、ユーロよりも大きい為替差益を狙いたい人に向く。

豪ドル(AUD)……比較的金利が高く経済的・政治的に安定した人気通貨

オーストラリアドルは、為替トレーダーにも人気がある。先進国にしては金利が高く、新興国のような経済的・政治的不安が少ないためだ。

オーストラリアは鉄鉱石や石炭などの資源が豊富なので、オーストラリアドルは資源輸出国通貨という位置づけだ。最大の貿易相手国である中国の景気動向に大きく左右される。世界経済が好調で資源需要が高まると買われやすく、経済不安が高まると売られやすい。現在は1豪ドル=77円前後で推移している(2020年9月時点)。

NZドル(NZD)……流通量が少ないため値動きが激しい

ニュージーランドドルは、同じオセアニアの豪ドルと似た動きをする。ただしニュージーランドは資源国ではなく農業国としての特徴が強いため、資源価格よりも農産物市況の影響を強く受ける。金利は、先進国の中では高めだ。

流通量が少ないため値動きが激しく、リスクを取って差益を狙いたい人に向いている。金融市場がリスク回避に向かう場面では売られやすい。相場は1NZドル=71円前後(2020年9月末時点)。

中国元(CNY)……日本の外貨預金では値動きが激しいオフショア市場で取引

中国は、今や米国に次ぐ経済大国だ。GDP (国内総生産) は日本の2.7倍に達している。

中国元の取引は複雑で、中国本土内で取引されるオンショア中国元市場と、海外で取引されるオフショア中国元市場に分けられる。香港は本土とは通貨制度が異なるため、オフショア中国元市場に含まれる。日本の外貨預金で扱われるのは、オフショア市場の中国元だ。

相場はオンショアとオフショアでほぼ同じ動きをするが、オフショアのほうが中国当局の管理を受けにくいため、値動きが激しい。

南アフリカランド(ZAR)……高金利を狙う投資家から絶大な人気

南アフリカは、経済成長が期待される主要新興国BRICS の一角だ。南アフリカは金・プラチナ・ダイヤモンドといった資源が豊富で、資源国としても知られている。

南アフリカでは賃金上昇・物価上昇の圧力が強く、インフレ対策として金利は常に高い水準にある。そのため、ランドは高金利を狙う投資家から絶大な人気がある。

例えば大和ネクスト銀行の個人向け金利は普通預金で1.0%、1年定期で3.2%。ただし値動きは大きい。リーマンショックではほぼ半値まで急落するなど、経済の影響を大きく受ける。リスクを取れる人向けの通貨と言えるだろう。

3.外貨預金の4つの注意点

外貨預金は、円の普通預金では考えられないようなリターンが期待できるが、気を付けなければならない落とし穴もある。

外貨預金は預金でありながら元本保証商品ではない

外貨預金の商品説明では「外貨ベースでは元本保証」とあるが、円貨ベースでは元本は保証されない。為替の動向によっては、円貨で払い戻す際に預入時の円貨を下回る可能性がある。為替差損のインパクトが軽視やすい点に注意したい。

為替手数料がかかる

外貨預金で通貨を交換する際は、為替手数料が発生する。金利や為替差益で利益を得ても、手数料を支払えば目減りする。外貨預金の手数料体系は銀行によって異なるが、1米ドルあたり片道0.25円や0.5円といったように設定されている。預入時の為替手数料が無料という銀行もある。実際の金額は為替レートによっても変わるが、目安として1米ドル=105円、片道0.5円の場合、100万円を交換するのに5,000円近くかかることもある。

外貨預金は預金保険制度(ペイオフ)の対象外

外貨預金は預金でありながら、預金保険制度の対象外だ。預金保険制度では、万が一金融機関が破綻した場合、利息が付く普通預金や定期預金は元本1,000万円を上限に保護されるが、外貨預金はその保証がない。大金を1つの口座に集約することは、非常にリスクが高いことを強調しておきたい。

金利優遇キャンペーンにつられない

外貨預金の金利優遇キャンペーンでは「年率5%」「年率10%」といった高金利を謳っているが、安易に飛びつくのは危険だ。例えば年率5%であれば、1ヵ月で実際に得られる金利は0.42%である。一度口座を作ってしまうと他の金融機関には目が向かないものなので、金融機関を選ぶ際にキャンペーンを判断材料にするのは控えたほうがいいだろう。

 

篠田わかな
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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