独特な雰囲気を醸すロシア側の話
サーラ役は2年前に大学を卒業したばかりのハンナ・カリク=ブラウンが演じ、生真面目で数学好きの女性をストレートに体現する。
脇を固めるのが映画『ミッション・インポシブル』シリーズの常連サイモン・ペッグで、上司役で味を出す。
ロシアの軍事機密の専門家でGCHQの大ベテランを演じる名優マーク・ライランス(スティーヴン・スピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』で、アカデミー助演男優賞など)が忘れられない印象を残す。同僚からは「過去の人」とされる彼が、サーラには心を開く。二人の交流が次の重要な展開につながってゆく。
若干ネタバレになるが、ドラマはバグを入れたロシアの青年の物語とサーラが住むロンドンの物語とを並行させて描く。
ロシア版では貧しい市民の生活、それとは反対の富裕層の暮らし、これに情報機関の内情が描かれ、独特の雰囲気を醸している。こちらの物語だけでも一本の映画になりそうなほどだ(なってほしい!)。
ドラマの原案を生み出し、脚本、監督、制作を担当したのは数々のテレビ・映画賞の受賞でも知られるピーター・コスミンスキー。
他国にサイバー攻撃されるという「脅威は残念だが、非常にリアルだ」(チャンネル4のプレスリリースより)。「作りごとの幻想」ではなく、「英国の諜報関係者は可能性があるシナリオとして想定している」と述べている。
ドラマは突然、終わってしまう。次のシーズンが待ち遠しいが、今のところ、実際にシーズン2があるのかどうか、いつリリースされるのかは発表されていない。
(放送批評懇談会が発行する月刊誌「GALAC」の2022年11月号に掲載された、筆者コラムに補足しました。)
編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2023年1月10日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。