工具を持った主人公が歩き回る
ドラマの時代設定は2024年。
世界の通信を傍受する英政府通信本部(GCHQ)の分析官たちが、総選挙を前にして英国に仕掛けられた敵国からのサイバー攻撃をいかに回避するかを描く。
2016年の米大統領選でロシアがサイバー上で妨害工作をしたことは良く知られている。ドラマの敵国もロシアで、「外国勢力による選挙妨害」は決して絵空事ではない。ゼロデイやエクスプロイトの活用も含め、ドラマを見ていると現実とフィクションがダブる。そのリアル感が怖くもあり、スリル一杯で楽しくもある。
第1話の冒頭は、ある遊園地の場面だ。若い女性が何かを探しているようだ。周囲を見回し、工具を使ってマンホールのふたを開け、中に入っていく。まだ探し物は見つからない。女性は金づちを出して壁をトントン叩く。
筆者は一瞬、ドラマの選択ボタンを間違えたかなと思った。
実はそうではなかった。サイバー攻撃に対し、GCHQの分析官たちがコンピューター上で対抗していくとき、画面上の数字や記号だけを映していてはつまらないし、第一、専門家でもなければ、何が何だか理解できない。そこで、ドラマでは人が工具を使って空間の中で作業をする姿で表現したのである。
冒頭の場面はロンドンの大学に通う主人公サーラがGCHQでの見習い職を獲得するために学友と競うコンピューター上の戦いを「遊園地で探し物をするサーラ」として描いたものだった。
当初は唐突に思えたこの仕掛けは、一旦その意味が分かると、サイバー戦の攻防が分かりやすく頭に入ってきた。
GCHQで働きだしたサーラは誰も感知できなかったバグを見つけ、「学生に何が分かる?」と彼女を低く見ていた先輩たちの度肝を抜く。
しかし、それは実は見つかることを予期して、ロシアのある人物が故意に入れたバグだった。
なぜそんなバグが入れられたのか。そして、GCHQはサイバー攻撃を撃退できるのか。サーラの恋の行方も含め、息を抜けない展開となる。