元民主党員のトランプ
だが、トランプ氏自身は根っからの保守主義者ではない。
彼は元々、民主党員であり、ヒラリー・クリントン元国務長官にも政治献金を行っていた過去がある。民主党員であった理由は、民主党が強いニューヨーク州で不動産業を営む上で合理的だったという商業主義的な意味合いもあっただろうが、彼自身が民主党が掲げる価値観にある程度共鳴していたことも背景としてあったはずだ。
2007年にトランプ氏は共和党より民主党の経済政策が優れていると述べており、リベラル派が支持する傾向がある人工妊娠中絶、大麻、同性婚の合法化を早い段階から容認していた。
そのような過去から、トランプ氏は教条的な保守主義者になりきれないでいる。
中間選挙の敗因は人工妊娠中絶?中間選挙で予想以上に共和党が勝てなかったことから、党内からトランプ氏に原因を求める声があがったが、トランプ氏は自身のSNSで敗戦責任を否定した。否定するどころか、共和党が思うように伸びなかった理由が人工妊娠中絶で過激な立場を取っていた候補のせいだったと持論を説いている。
“It wasn’t my fault…” pic.twitter.com/c01P2zIxO7
— Chris Megerian (@ChrisMegerian) January 1, 2023
トランプ氏は過激な発言で物議を醸す一方、どのイシューが政治的に人気かそうではないかをかぎ分ける優れた政治的嗅覚を持っている。それは2015年の段階から当時の共和党内で少数派と見られていた厳しい国境管理政策の必要性を主張していたこと、最高裁が人工妊娠中絶の権利を撤回することが女性層の離反を招くことを見通していたことから明らかである。