ユーザーに課される「3週」という謎の儀式とハードル

SHOWROOMの売上は有料ギフト(投げ銭)の販売による手数料と説明したが、すべてのリスナーがお金を払って応援しているわけではない。そこで使われるのが無料ギフトだ。

ライブ配信を見る=配信ルームに入ると画面下部に星のマークが表示される。これをタップすると無料のギフトを投げてライバーを応援できる。ライバーにとって無料ギフトは収入にはならないがポイントとして加算されるため、なおかつ有料ギフトを投げる人は一部のため、前述のイベントで勝つには極めて重要な要素だ。

他のアプリでも無料と有料のギフトがあることが一般的だ。取得方法は一定の時間を視聴する、アプリを開いてログインをする、SNSで配信を拡散して宣伝するなど様々だ。

サービスの一部が無料で残りは有料、これはあらゆるカテゴリで使われているビジネスモデルでフリーミアムとかメーター制という手法だ。日経新聞なら一ヶ月で記事は10本無料、もっと読みたければ有料会員になってくださいという仕組みだ。漫画アプリなら1日一冊まで無料など様々だ。

SHOWROOMでは応援に使うギフトが一部無料となっている。

無料ギフトの「星」を獲得するための条件が「配信ルームに入って30秒経過すると10個×5色獲得」となっている。一度に保有できる星の数は99個が5色で最大495個、当然取り放題ではなく時間制限がある。一度星を満タンになるまで獲得すると一時間待たないと次の取得はできない。

無料ギフトについて細かく説明した理由は、このルールが筆者の見る限りライトユーザーの参入を阻む、つまりSHOWROOMのユーザー拡大を阻む原因になっているからだ。

30秒で貰えるなら大したハードルに見えないかもしれないが、まずは数が多すぎる。保有する無料ギフトをすべて投げるには495回もタップする必要がある、と言えばどれだけ面倒か分かるだろう。

加えて、無料ギフトを最大数まで獲得するには他のライバーの配信を10人分も見る必要がある。これはユーザーには多数のライバーを見て気に入った人を見つけてほしいという意図、ライバーには多数のリスナーと接触する機会を提供するという面で意味はあるだろう。

ただ、リスナーは応援するライバーに星を投げるため配信中に他のルームで無料ギフトを集める必要がある。つまりこの「星集め」をする間は応援したい人の配信を見られない、という意味不明な矛盾が発生する。

これはリスナーにとって極めて不親切な仕組みで、明らかにユーザー体験(UX・ユーザーエクスペリエンス)を損ねている。3週というワードは、この星集めを効率的に行うと一回の配信で最大で495個×3回分、約1500個分のギフトを集めて投げられることからそう呼ばれている。興味のある人は「SHOWROOM・3.週」でググってみてほしい。面倒かつ複雑すぎる手順に呆れるだろう。

もちろん、無料ギフトの仕組みが面倒ならお金を払って有料ギフトを買えば良いという話になるが、これは間違いだ。

ユーザーを遠ざけてしまう無料ギフトの仕組み。

ライトユーザーでSHOWROOMを使い始めたばかり、あるいはお金を払うほどじゃないけどたまに見る程度のリスナーにとって、応援に必要な大量のタップや無料ギフトの獲得が面倒なこと(目当てのライバーが見られない仕組み)は、明らかに不親切な仕組みとしてユーザーが増えない原因にもなっている。ヘビーユーザーになる前に離脱してしまう。

面倒なら何もせずに見るだけでも問題は無いが、ライブ配信アプリの存在意義はライバーとのコミュニケーションでそこに投げ銭も含まれると書いた通りだ。

フリーミアムの手法、大量の無課金ユーザーと一部の課金ユーザーで運営するサービスは、ユーザー数の増加が命だ。なぜならすそ野が拡がって初めて課金ユーザーも増えるからだ。言うまでもなくユーザーに過剰な手間を取らせるべきでない。

ライトユーザーからヘビーユーザーとなって課金をする人が増えなければ、あるいは無課金でも継続的にライバーを応援するユーザーがいなければ、ライバーが離脱する可能性が高まり、SHOWROOMの売上にもマイナスになる。

SHOWROOMでは、有名なタレントやアイドルを除けば多くのライバーのフォロワーは数百人程度、1000人を超えたら多い方だ。Twitterやインスタグラムのフォロワー数と比べたらこれは極端に少ない。ユーザー数の少なさはSHOWROOMに限らず他のアプリでも同様だが、SHOWROOM単体ではUXの悪さが影響しているはずだ。

この仕組みに慣れたユーザーからはSHOWROOM最大の特徴じゃないかと文句を言われそうだが、どー考えてもユーザーが増えない最大の原因だと思いますよ、ユーザーが増えないとあなたが応援してるライバーもいつか配信辞めちゃいますよ、という事になる。