安全保障の議論で足枷にすぎない一部野党

マスメディアや一部野党は、「反撃能力」といったあいまいな論点にとびつき皮相的な与党攻撃を繰り広げるでしょうが、本質的な意義は小さいでしょう。ただし目先の注意をそこにあつめておき、本質的な備えの邪魔をされないための役には立つかもしれません。

戦後ながらく防衛(安全保障)の議論において、野党は足かせでしかありませんでした。「空中給油機」への妨害や「(石油が届かなくても)ちょっと不便になるだけ」など、これまで野党が言ってきたことは時間をおいて検証すれば政治闘争の出汁に使った奇妙な主張ばかりです。それは(国民民主党など一部を除き)今も変わりません。

例えば『日曜報道THE PRIME』というテレビ番組で12月18日、立憲民主党の渡辺周議員(元防衛副大臣)が“論客”として出演し次のように語りました。

“トマホークもそうですけど、果たして、40年くらい前に開発されて湾岸戦争に使われた、巡航速度が800~900km/hという、航空機並みのスピードで飛んでくるものを、今もう迎撃される、となれば、果たしてこれを今、もしかすると時代遅れになったものを高額な予算をかけて果たして買うことが現実的であろうか。(略)いきなり500基を買うという話になっていますが如何なものか。これは検証しなきゃいけないと。(同番組より筆者文字起こしの上引用、太字は引用者)”

最新型のトマホークはブランド名こそ同じですが、最新型は「ブロックV」でGPS搭載やエンジン換装など諸機能が強化され、湾岸戦争の頃とは“別物”と言えます。また2017年にトランプ大統領(当時)が59発のミサイルをシリア空軍基地に打ち込んだ事例をご記憶の方も少なくないと思いますがその際、撃った巡航ミサイルはトマホークです。つまり現代においてもトマホークは打撃兵器として有力です。渡辺議員のトマホークへの問題意識は添付の記事(良記事)を読めば悉く解決されます。

最新鋭のトマホークBlockⅤ、速度が遅い巡航ミサイルの価値

最新鋭のトマホークBlockⅤ、速度が遅い巡航ミサイルの価値(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
常に最新鋭にして最良の性能が与えられたトマホーク巡航ミサイル

トマホークを購入したり、潜水艦に垂直発射能力を持たせたり、自前のミサイルを開発することは、大局的に見て有意義であると考えます。

渡辺議員の御言葉を借りるならば「時代遅れ」なのは、「トマホーク」ではなく一部野党の「トマホークに対する知識やイメージ」です。もっというと兵器や戦略あるいは最新の安全保障に対する知見こそ時代遅れです。

「これまで米国側に購入を要望しても断られていたものが買えるようになる」、その事実を知らないならば問題外ですし、知っていて意味がわからないのであればいま少し連想力を鍛えるべきです。苟も野党第一党の議員として国政に関して政府と議論するならば、それくらいは汲み取れるだけの予備知識を持っていただきたい。これでは今年(2023年)も有意義な議論は期待できないではありませんか。

検証されなくてはならないのは(一部を除く)日本人の安全保障戦略に対する知見の更新状況ではないでしょうか。

安全保障に海上護衛戦への備えを

「継戦能力の強化」には、備蓄砲弾量や設備地下化等の抗堪性のみならず、非常時の物流確保など、広く深い備えが必要になります。つまりミサイルや砲弾のやり取り(戦闘)を伴う戦闘ばかりでなく、海上封鎖のような長期持久戦にも備えることが必要です。

2023年の日本では、春に統一地方選挙が予定され、防衛費増に伴う財源論を中心として議論が迷走しそうな予感がしますが、安全保障戦略に関しては、真面目(しんめんもく)な議論が生起することを期待致します。