閾値走のプログラミング
閾値走を行う時期
閾値走は体にかなりの負荷がかかるトレーニングです。大きな効果が望めると同時に、故障のリスクも高くなりますので、年間を通してできるものではありません。本番とするレースの時期と目標からトレーニング計画を逆算していくことになります。
マラソンに向けての段階的なアプローチには指導者によって様々な理論がありますが、基本的には距離を積む基礎段階が終わった後、本番レースの1~2か月ほど前に、スピードを上げていく段階で、インターバル走などに加えて閾値走を週1,2回ぐらいの頻度でメニューに組み込むのが一般的です。
閾値走のメニュー設定レベル
一言で閾値走と言っても、ランナーのレベルによって、そのかけるべき負荷は大きく異なります。基準となるペースが異なるのですから当然です。
共通していることは、閾値走そのものの練習時間は20分から30分程度であること(ウォームアップやクールダウンの時間は含みません)、それを行う頻度は週に1,2回程度にすることです。
物足りないように感じるかもしれません。その程度の頻度と強度で本当に効果があるのか、と疑う人もいるでしょう。しかし、閾値走とは典型的な「量より質」のトレーニングです。短時間で高い効果、がポイントです。
閾値走を行う場所の選び方
フリー写真素材ぱくたそ 閾値走では一定の距離または時間を設定されたペースで走り続けることが必須の条件です。従って、信号待ちなどで立ち止まるわけにはいきません。またアップダウンがあったり、路面の状況が変わったりすることも、ペースを乱す外的要因になりますので、閾値走のコースとしては望ましくありません。
陸上競技トラックは上記の条件をすべて満たしています。もし陸上競技トラックを使用することができたら、閾値走を行う場所としてベストです。河川敷などの長い直線コースでも良いでしょう。あるいは屋内でトレッドミルを使用することも選択肢のひとつになります。
閾値走ペースの設定を変えるタイミング
負荷を徐々に上げていくのはトレーニングで効果を出すための原則ですが、閾値走はその負荷設定を上げるタイミングの見極めがもっとも難しいもののひとつです。例えば、ある距離を以前より速く走れるようになったとしても、その時の心拍数が設定した閾値走ペースより高くなってしまってはならないからです。とは言っても、ずっと同じペースで同じ距離を走り続けていては成長もありません。同じコースを設定した心拍数の範囲内で走り終えたとき、自然にタイムが上がっていることが理想です。
閾値走のバリエーション
閾値走と同じ意味、あるいはそのバリエーションとして解釈されるトレーニング方法がいくつかあります。下のペース走、テンポ走、あるいはクルーズインターバルなどがその代表的な例です。それぞれにメニューを設定するための目安となる距離や時間、1回で走り切る形式か、インターバル形式か、頻度と回数は、と様々な違いがあります。厳密な定義があるわけではなく、極端に言えば、指導者1人1人によって解釈も異なります。下はあくまでその中の一例です。
閾値走①ペース走
ペース走はジョギングと同じか、やや速いくらいのペースで、時間は20分~30分ぐらいを目安に走ります。感覚的には5キロ走よりは遅く、10キロ走よりは速いペースです。
ペース走は下の2つと比較するとやや長い距離を走ることを指すことが多いようです。上の説明と矛盾してしまいますが、20キロペース走、のようなメニューを設定する指導者もいます。重要なポイントはその間のペースを一定に保つことです。それより速くても遅くても、目的とする効果は望めません。
閾値走②テンポ走
テンポ走をオレオ・クッキー例えることがあります。つまり、トレーニングの最初と最後はゆっくりとしたジョグで、中央に閾値走ペースのランニングをメインに行うのがテンポ走です。
テンポ走の最初と最後のパートは距離にして1~2キロ、時間にして10分ぐらいです。ウォームアップとクールダウンと考えても良いでしょう。メインの閾値走ペースは距離にして6~8キロ、時間にして20分~30分を目安にして、ランナーのレベルに応じて設定するのがポイントです。
閾値走③クルーズインターバル
自動車のスピードを一定にする機能を「クルージング」と呼びますが、クルーズインターバルは閾値走ペースのランニングを5~10分ぐらいを1セットとして、間に数分の休息を挟んで、何セットかを行うトレーニング方法です。
クルーズインターバルは閾値走ペースで連続して走る時間が短いので、比較的取り組みやすいと感じる人も多いかもしれません。インターバルの距離や回数はランナーのレベルによって調節します。ここでも重要なポイントは設定した閾値走ペースを守ること、閾値走ペースで走る合計時間を20分~30分の範囲に収めることです。
閾値走の段階的導入アプローチ
ランナーのレベルによって、上のバリエーションを段階的に導入していく方法があります。例えば、初心者はペース走を10~15分のみ行い、中級者は10分間のクルーズインターバルを2セット、上級者以上はテンポ走を30分行う、という具合に負荷設定を高めていきます。
同じ考え方を使って、トレーニングの長期計画の中で、閾値走のメニューを段階的に変えていくこともできます。どちらにしても、徐々に負荷を上げていくことがポイントです。