効果測定ができず、民間企業も参入しづらい
また、「効果を計りづらいこと」もキャリア教育が普及しない理由の一つであると考えています。他の教育科目と異なり正解がないのですから、これはある意味仕方のないことです。
期末テストで正解不正解を問う問題が作れるわけではなく、何をもって効果があったとも言えない。答え合わせは数年後、ひょっとしたら数十年後かもしれない。このように、施策に対する効果測定がしづらいのがキャリア教育なのです。
社会人講話をアレンジする、アクティブラーニングを導入する、インターンシップや企業見学イベントを開催するなど、各教育現場が試行錯誤をしながら、さまざまな取り組みを行っていますが、これらを実施したうえで「で、どういう効果があったのか?」となるわけです。
取り組んだものに対して成果が可視化されないというのことは、仕事をしていて辛いものです。「やったことの効果があったのか、なかったのかがわからない」と、組織として評価が難しく、次に向けた改善もしづらいでしょう。
効果を測定しづらいため予算がとれず、ビジネスとして成り立たないため民間企業も参入しづらい。就職支援会社や教育会社がこの10年間、さまざまなキャリア支援サービスを展開しましたが、結局マネタイズに苦戦し、撤退していきました。
効果を検証できないから、キャリア教育は広がらないのです。
主役である若者がそもそも必要としていない
そして最後の課題。それは、教育の受け手である若者たちに「キャリア教育」の必要性が届きづらいということです。
幸いにも日本はまだ経済大国であり、多くの若者の目の前には楽しいことが山ほどあります。成績評価に直接影響する科目の勉強が忙しいのに、遠い先の人生を考えて「評価がつきづらいキャリア教育」に熱心に取り組む必要性を感じないのもわかります。
「将来のことを考えなければならない」となんとなく感じていても、「今やらなければならない」こととして認識している若者はそう多くないのです。
それでも学校が用意したキャリア教育プログラムに積極的に参加する若者は一定数います。しかし、大抵こういう学生は元々志も能力値も高く、キャリア教育を大人が施さなくても自分でどんどん成長してくれる存在です。
一方、本来キャリア教育を届けなければならない学生には、大人がいくら誘ってもなかなか参加してくれない……。ビジネスで例えると、消費者が望んでいない商品を一生懸命作っているみたいなものです。これは普及しないですよね。