なぜ今ジョブ型雇用が広まっているのか

なぜ今、日本でジョブ型雇用が広まっているのでしょうか?ここでは大きく企業側と働き手側の2つの観点で考えてみたいと思います。

企業側の観点:インターネットの浸透

企業視点では、インターネットの浸透が非常に大きいと言えます。インターネットの登場以前は情報の入手経路は限られ、ある程度業界への参入障壁がありました。それが今や情報の民主化が起きています。

情報の民主化によって、市場が変化するスピードが圧倒的に早くなりました。一昔前の経営のスピード感では、3年、5年かけて検討や市場参入をしていたところを、半年で検討しながらサービスをつくっていくやり方が多くなってきました。

変化が激しい中で異業種を含めた競争が激化していくと、当然企業の寿命も短くなっていきます。そのような時代では社員を長期的に育て、採用にかかるコストを後で回収する旧来の雇用モデルは成り立たなくなってきているのです。

そんな背景から、企業においては明確なスキルを持ち、即戦力となる人材を採用したいというニーズが高まっています。

働き手の観点:働き方に関する価値観の変化

次に働き手の観点です。かつて「24時間働けますか?」というキャッチコピーを用いた栄養ドリンクのCMがありました。会社とともに人生を過ごす、御恩と奉公の価値観をよく投影しています。

しかし、その後日本経済が衰退し、デフレが30年以上続く中で大手企業も安泰ではないことを、多くの人が自覚するようになりました。

今では一社に長年勤めるよりも、どこでも生きていけるスキルを身につけたい、会社に頼らず生きていきたいという価値観の人たちが若い世代を中心に増えています。

そのような意識を持ち始めた働き手にとって、自らの専門性やスキルを深めていくジョブ型雇用の在り方は親和性が高いのだと思います。

働き手に求められる姿勢

ジョブ型雇用が広まる社会において今後、働き手にはどのような姿勢が求められるのでしょうか?私が考えるのは以下の4つの要素です。

①専門性
②自立性
③柔軟性
④積極性

①専門性

ジョブ型雇用における採用では「求職者が職務内容で求められるスキルを有しているか」が重視されます。そのため、働き手は特定の分野でより専門性を高めていく必要があります。

またニーズの変化を先読みして、自身でそのスキルをさらに磨いていく必要もあるでしょう。

②自立性

ジョブ型雇用では労働時間や出勤率、勤続年数といった指標で評価はされません。契約内容にもとづいた定量的に測れる仕事の成果で評価されるのです。

比較的、自由度の高い働き方ができる可能性がある一方で、求められる期限内にしっかりと成果が出せるよう自分で仕事をマネジメントしていく力が求められます。

そして会社にキャリアを委ねるのではなく、自分で主体的にキャリアを設計していく必要もあるのです。

③柔軟性

従来は、企業でとある仕事が不要になれば、携わっていた社員を配置転換して、別の仕事を与えてきました。しかし、ジョブ型雇用では契約で定められた業務を担うため、その仕事がなくなれば雇用も解消されます。

そのため、働き手は自身で次の雇用先を見つける力、いわゆる転職力が求められます。もっと言えば、雇用環境が都度変化していくことに柔軟に対応する力が求められるのです。

④積極性

最後に必要なスキルは、積極性です。上記の柔軟性の項目で述べたように、働き手は企業から仕事を与えられるのを待つのではなく、能動的に自ら獲得していく必要があります。

自分の専門性やスキル、成果を可視化して、相手に理解してもらうアピール力も必要になるでしょう。その意味で主体的かつ積極的な姿勢が大事になるのです。