近年、職務や責任の範囲、必要なスキルなどを明確に定めた上で雇用契約を結ぶ「ジョブ型雇用」が日本で注目を集めています。
元々、欧米で古くから導入されている雇用形態ですが、なぜ今、日本で脚光を浴びているのでしょうか?
今回は株式会社ニット 代表取締役社長の秋沢崇夫氏に、ジョブ型雇用が日本で広がっている背景や、これからの時代で働き手に求められる姿勢についてご寄稿いただきました。
雇用環境の変化とジョブ型雇用の広まり
終身雇用や年功序列といった右肩上がりの経済を前提につくられた制度を維持できなくなりつつあり、さらには新型コロナウイルスによって在宅勤務やリモートワークの浸透が進む日本。
今多くの日本企業は雇用を取り巻くさまざまな変化に直面しています。そんな中、脚光を浴びているのがジョブ型雇用という仕組みです。日立製作所やKDDI、富士通など大手企業を中心に一部導入が進み始めています。
ジョブ型雇用とは、明確なジョブディスクリプション(職務記述書)のもとに雇用されるシステム。職務や責任の範囲、必要なスキルなどを明確に定めた上で雇用契約を結びます。元々、欧米では古くからある雇用形態です。
一方で多くの日本企業が採用してきたメンバーシップ型雇用は、基本的に職務を限定しません。長期的にさまざまな配置転換を行いながら会社に人材をフィットさせていきます。
したがって、1つの専門性を追求していくというよりも、幅広くさまざまな知識を身につけることになります。
それではなぜ今、日本ではジョブ型雇用が注目されているのでしょうか?さらに雇用環境が大きく変化しつつある現代において、企業や働き手はどのように適応していけばいいのでしょうか?
私は、2015年よりフルリモートワーク前提で創業し、オンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU(ヘルプユー)」を運営しています。
今回は長くフリーランス人材が集まるHELP YOUを運営してきた経営者なりの視点でジョブ型雇用との向き合い方や、未来の労働環境について考えていきたいと思います。
ジョブ型雇用と類似した私たちの事業運営
HELP YOUはオンラインを通じて、お客様から業務を委託してもらい、その業務を日本全国・世界35ヵ国にいる約500名のフリーランスメンバーが代行するサービスです。
人材不足に悩む企業がコア業務に集中できるサポートをするこのサービスでは、主に仕事を割り振るディレクターと仕事を進めるスタッフというチーム制で業務に取り組んでいます。
業務を委託するクライアントに対して専属のディレクターがつき、依頼される業務や作業ごとに最適なスキルを持ったメンバーをアサインしていくというのが大まかな流れです。
業務はデザインやライティング、SNS運用からマーケティング、経理業務など多岐にわたります。
対応にあたるメンバーはみなフリーランスであるため雇用という形ではありません。ただ、必要な職務を明確にし、その仕事に適した人材を配置するジョブ型雇用と仕組みは極めて近いと言えます。