ところが朝日新聞の説く「歯止め」というのは日本に対する抑止のブレーキのことなのだ。日本の安全保障を論じるのに、その日本こそが最も危険な存在だから歯止めをかけておかねばならない、とする倒錯した主張を朝日新聞はいつも中心に据えてくるのだ。

朝日新聞のこの立ち位置は明らかに日本ではない。日本の安全を考える政策論の冒頭がその日本自身をまず抑えねばならない、という理屈なのだ。この理屈は中国や北朝鮮など防衛面で日本を明らかに敵視する立場の側を代弁している。

だから朝日新聞はどこの国の新聞なのか、という疑問がわくことになる。朝日の主張の歴史をたどっても日本の防衛を強化する政策、そして日米同盟を強化する政策にはすべて反対してきた。この立場は中国とまったく同じである。

私が北京に駐在した2000年ごろも、中国政府機関は日米共同のミサイル防衛構想に連日のように激しい反対を浴びせていた。同時に朝日新聞もまったく同様のミサイル防衛反対のキャンペーンを展開していた。日本の防衛政策に関しては中国政府と朝日新聞の主張は奇妙なほど一致してきたのだ。

今回もそのおなじみ「中国政府=朝日新聞」という連帯の反対キャンペーンがすでに始まった。日本の安全保障を他の諸国並みにする「反撃能力」にさえ大反対するキャンペーンである。

朝日新聞のこうした基本姿勢をみると、日本の国家や国民を守る能力を日本自身が高めることに反対しているわけだ。となれば、どうしても「反日」という形容がふさわしくなる。日本の国益を害する「国害」という造語ふうの表現も生まれてくる。

だから日本の安全保障に関して朝日新聞は反面教師としての「国宝」であり、日本国の多数派の立場を敵視するという意味での「反日」、さらには日本の基本的な国益を侵害するという意味での「国害」なのだと総括せざるをえないのである。

古森 義久(Komori Yoshihisa) 1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。

編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年12月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。