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前回に続き、最近日本語では滅多にお目にかからない、エネルギー問題を真正面から直視した論文「燃焼やエンジン燃焼の研究は終わりなのか?終わらせるべきなのか?」を紹介する。

(前回:「ネットゼロなど不可能だぜ」と主張する真っ当な論文①)

2.1. エネルギーを代替するための必要量

この節では、表1の化石燃料分(489.7 EJ)の60%をCO2フリーのエネルギーで代替するための各種必要量を見積もっている。

表1

以下、数字はすべて本文そのままの値を使うが、前稿で述べた通り、ここでは1EJ=277.8TWhつまり1kWh=860.6 kcal=3597kJで電力を一次エネルギー換算しているので、電力の一次エネルギー換算値は小さく出ることに御注意いただきたい。

筆者の考えでは、1kWh=2074kcal=8669kJを使うべきである(前稿ではMJとすべき所をkJと書き間違えていたので、お詫びして訂正します)。

繰り返しになるが、860.6 kcal分の石油から1kWhの電力は決して作れず、1kWhの電力を実際に得るには2074kcal分の石油が必要になるから、電力の石油換算一次エネルギ−の値は、物理表(1 kWh=860.6kcal)は使えないのである。つまり換算値が約2.4倍違う。現在の世界総計一次エネルギー値で言えば、電力の一次エネルギー比率は約2倍ほど違ってくる(17%→34%)。

しかし、本論文の議論には大筋変更の必要はない。なぜなら、現状では化石燃料の比率が圧倒的に大きいので、電力の一次エネルギー換算値が2〜3倍違っても、結論は大きく変わらないからである。ただし将来的に、化石燃料以外の電力が増えてくれば、この「誤差」は無視できなくなる。