3.財政赤字は未来世代の負担になるのか
いま国債を発行すると、未来のどこかで償還しなければならない。その財源は税しかないので、今の世代は税を負担せず、未来世代が負担するが、この未来とは、いつの時代だろうか。
もしあなたが永久に生きるとすると、現在世代と未来世代の区別はなく、今の財政赤字は将来の増税と相殺されて何も起こらない。これがリカードの中立命題である。もちろん人間は永久に生きることはできないが、子孫に残す遺産が課税で減ると考えると(バローの)中立命題が成立し、財政赤字は子孫の負担になる。
しかし現実の人々は、そんな遠い将来のことを考えない。人々の時間視野が日本政府の滅亡する時間より短ければ、負担を永久に先送りするネズミ講が可能になり、近未来の世代には負担は発生しない。
4.国債は「不安定財源」か財政赤字を増やすことに反対する人のもう一つの理由は、国債を増発するとインフレになり、経済が不安定になるということだ。ちょっとした景気変動ならいいが、1980年代の不動産バブルのような過剰債務になると、その崩壊で大不況になり、経済が今も立ち直れない。
このリスクは論理的にはあるが、今の日本の3%程度のインフレを、それほど心配する必要はないだろう。長期金利は、日銀がゼロ金利で無制限に買い入れているので、当面は大きく上がらない。日本はこの20年ずっと企業が貯蓄過剰なので、
貯蓄-投資=財政赤字
という国内ISバランス条件から、この左辺がプラスである限り、貯蓄過剰を相殺する財政赤字が必要である。
5.財政赤字は発散するか財務省が2025年にプライマリーバランスを黒字にする目標を重視するのは、