来年度予算の焦点になっている防衛費をめぐっては、いろいろ混乱した議論があるので、整理しておこう。まず首相は「防衛力を未来に向かって維持・強化するための裏付けとなる財源は不可欠だ」というが、それと増税がどう結びつくのだろうか。
防衛力強化への増税、首相「不可欠だ」…国債発行は否定「未来の世代に対する責任」UpHw3sU10#政治
— 読売新聞オンライン (@Yomiuri_Online) December 10, 2022
増税が「未来の世代に対する責任」だというが、国債は無責任なのか。そんな無責任な財源で、毎年30兆円以上の社会保障関係費を出して大丈夫なのか。今すでに1200兆円以上の政府債務があるが、それは無責任ではないのだろうか。
1.防衛費を増やすには「防衛財源」が必要なのか防衛費は一般会計予算である。特別会計で独立採算になっているわけではないので、防衛費と財源をワンセットで考える必要はない。「消費税は社会保障目的税」などというのも擬制で、税金に色はついていない。
予算の優先順位からいえば、国防は国家の存立条件なのだから、防衛費はすべての財政支出に優先し、歳入が減っても減らすことはできない。特別の「防衛財源」は必要ないのだ。
2.防衛費は「公共事業」か財政法では、公共事業費は建設国債で調達できるが、それ以外は特例公債(赤字国債)で調達しなければならない。これは自民党が絶対多数の国会では同じことだが、心理的には予算案と一緒に議決できる建設国債のほうが税に近い。
海上保安庁の施設が建設国債で建設できるのに、防衛省の施設が赤字国債になっているのは、「戦争放棄の規定を裏書保証せんとするもの」だと1947年に大蔵省が逐条解説している。つまり予算折衝を通じて、財務省が軍備拡大に歯止めをかけることが目的なのだ。
これを安倍元首相は「赤字国債の発行を禁じる財政法4条は戦後レジームそのものだ」と批判し、防衛予算を建設国債で調達する防衛国債を提案した。今回、自民党税調が防衛費の一部を建設国債で調達するのは、これと同じ発想である。