定年後は悠々自適に暮らしたい。そうした思いは少なからぬ人が抱いていることだろう。快適なセカンドライフを送る上で、どこで暮らすかは生活の質を左右する重要な要素だ。今回は定年後に住みやすい街(国)を関東、関西、海外別に紹介する。

首都圏の定年後に住みやすい街

首都圏で、定年後に住みやすい街として人気なのはどこか。

鎌倉市(神奈川県)

神奈川県鎌倉市は鎌倉大仏をはじめとして歴史的な建造物が多く、風光明媚な街として知られる。東京都心へ約1時間でアクセスできるなど交通の利便性が高く、定年後の居住先として人気だ。

由比ヶ浜や江の島など、相模湾には美しい景観が広がっており、さまざまなレジャーを楽しめる。

武蔵小杉(神奈川県川崎市)

住みたい街ランキングで上位に位置する武蔵小杉も人気だ。東京都心に比べれば住居費など生活コストは安く、JR横須賀線や湘南新宿ライン、東急東横線など6路線が乗り入れている。

近年はタワーマンションが建ち並び、大型商業施設も整備されて住みやすさが向上している。

横浜市(神奈川県)

いわずと知れた横浜も定年後に住みやすい街に数えてよいだろう。横浜市は政令指定都市の中でも最大の人口を誇る都会だ。しかし、郊外に出ると自然豊かな公園が多く、都会と自然のバランスが取れた街として人気が高い。

都会的な生活を送りつつ、自然も満喫できる環境が整っている。

吉祥寺(東京都武蔵野市)

東京の吉祥寺は若者に人気の街というイメージがあるが、定年後に暮らしたい街としても人気だ。交通アクセスは、JR中央線と京王井の頭線が乗り入れ、駅周辺は商店街がにぎわいを見せるなど生活に便利だ。

駅の南側には井の頭公園があり、自然も広がっている。

関西圏の定年後に住みやすい街

関西圏では、以下の3市が人気だ。

芦屋市(兵庫県)

芦屋は高級住宅街のイメージがあるが、定年後に住みやすい街として定評がある。芦屋市は南北に長い形をしているのが特徴だ。北から順に阪急神戸線、JR東海道本線、阪神本線が東西に並行して走っている。

3つの路線のうち、北へ行くほど高級住宅街の印象は強まる。神戸、大阪にアクセスしやすく、医療施設も多い。

大津市(滋賀県)

関西圏では、大津市も定年後に住みやすい街の候補にあがる。京都まで電車で9分と近いだけでなく、大阪へも40分程度で出られる。

大津は琵琶湖に面し、歴史的風土を残していることから「古都」にも指定されている。琵琶湖を望む景観など、自然環境も豊かだ。

生駒市(奈良県)

最後に紹介する定年後に住みやすい街が奈良県生駒市だ。生駒市は大阪に隣接し、近鉄けいはんな線を利用すれば大阪市内へアクセスしやすい。生駒から大阪に通勤する人が多いのも特徴だ。

住居費を含め生活コストは比較的安く、住みやすい街として注目されている。

老後の海外移住で人気の国ランキングTOP5

一般財団法人ロングステイ財団が発表した調査によると日本人に人気の長期滞在国のランキングは以下の通りである。(一般財団法人ロングステイ財団「ロングステイ希望国・地域2018」より)なお、外国為替は2020年1月時点のレートを採用しており、移住最低費用は滞在のために必要なビザ取得費用だ。

1位:マレーシア

マレーシアは、ロングステイ希望国・地域で2006年から1位を守り続けており、近年日本人に人気の移住先である。住環境がよく物価が安いことに加え、治安が比較的よいこと、食べ物が日本人の口に合うなどが人気の理由だ。ただ国民の6割をイスラム教徒が占める国であるため、文化やマナーの違いには気をつけたい。

マレーシアへの移住のための人気ビザは「MM2H(マレーシア・マイ・セカンドホーム)ビザ」だ。年齢制限はなく誰でも申請でき、最長10年(更新可)の長期滞在が可能である。

2位:タイ

「微笑みの国」とも呼ばれるタイ。首都のバンコクではBTS(高架鉄道)やMRT(地下鉄)など交通の便も充実してきており、日本と比べ遜色ないとも言われている。多くの日本企業が進出し、日本ブームともあいまって日本人にとってはなじみやすい環境だ。家賃や生活費が日本より安く、日本では高価なエステやゴルフなどもリーズナブルに利用できる。

退職者向けのビザとしては、「ノンイミグラントビザ-O」を取得することで1年間タイに滞在できる。タイ国内での延長も可能だ。

3位:ハワイ

日本人にとってはリゾート地として真っ先に思い浮かぶハワイは、移住地としても人気だ。マリンスポーツやゴルフなどのレジャーが充実しているほか、ショッピングモールやブランドショップなども建ち並ぶ。レジャーと生活環境のバランスがいい場所と言えるだろう。

治安は比較的よいと思われているが、窃盗事件は少なくないので注意が必要だ。またハワイの物価は総じて高めである。

ハワイへの移住にはアメリカのビザを利用することになる。ただし、長期滞在に向いているビザというとスポーツ選手や官僚など特定の職業や立場の人に特化しているものがほとんどだ。

アメリカでは90日以内の観光等を目的とした滞在であればビザは不要なので、老後のハワイへの移住を考えるなら1年のうち数ヵ月をハワイ、残りを日本と季節によって住み分けるのが現実的かもしれない。

だがどうしても長期滞在をしたいという方は「EB-5永住権プログラム」が比較的永住権が取りやすいといえる。このプログラムはアメリカの地域企業の発展を目的とした永住権取得プログラムで、海外投資家を対象としている。

4位:フィリピン

年間を通して温暖な気候のフィリピン。近年治安が改善されてきたこともあり、日本からの移住先として人気が高まっている。特に東南アジア有数のリゾート地として知られるセブは観光産業が発達しているため、ショッピングモールや高級コンドミニアムが多数ある。都市部は目覚ましい発展を遂げているが、日本と比べると物価もまだ安いといえるだろう。

安全面はエリアによって差があるが、日本ほど治安はよくない。また、水道水が飲用できないなど衛生面にも不安が残るが、それらに気をつければ楽しく少しぜいたくな生活ができるだろう。

長期滞在のためのビザは比較的取得しやすい。「SRRビザ」は基本的に滞在日数に制限がなく、35歳以上で申請できる。移住ビザ取得に必要な条件は以下のようになっている。

5位:オーストラリア

広大な土地を持つオーストラリアも、日本人の移住先として長年人気である。都市ごとに違った気候、特徴をもち、シドニーやメルボルンのような大都会もあれば壮大な自然も多く魅力に富んだ国である。

オーストラリアへの移住には55歳以上向けに発給される投資家リタイアメントビザが発給されていたが、現在は新規発給が終了している。

長期滞在が可能なビザは、他に家族永住ビザ専門的な職業・研究目的などだが、取得要件は厳しい。例として「技術独立永住ビザ」の取得要件を挙げる。今後外国人シニアを受け入れるビザがどうなるかは注視しておきたい。

移住のメリット・デメリットを理解して入念な準備を

老後に移住を考える場合、大切なのは事前準備をしっかりしておくことだ。特に海外の場合は、現在物価が安い国でも自分が老後を迎える頃は物価がどうなっているかはわからないし、医療制度も変わっている可能性もある。自分が老後に何を求めるのかを考え、入念な情報収集をしておこう。

文・MONEY TIMES編集部