ジュネーブに本部を置く国連人権理事会では10月6日、中国新疆ウイグル自治区での人権侵害問題に関する討論開催の是非を問う欧米主導の動議が反対多数で否決された。国連機関が人権問題では無能であることを世界に向かって明らかにした。

中国共産党政権は国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が8月31日に発表した報告書「ウイグル人権報告書」の公表を阻止するために必死の国連外交を展開し、ウイグル人の人権問題に関する動議を数で葬ったのだ。国連人権理事会だけではない。国連安保理事会でも中国、ロシア、北朝鮮の人権問題や国際条約違反は中国とロシア両国の拒否権の行使で却下され、否決されてきた。

中国は自国の人権問題が俎上に上る度、「中国の内政に干渉すべきではない」として反論してきた。すなわち、中国の「人権」の定義と「世界人権宣言」で記述されている「人権」ではその定義が異なるというわけだ。

国連加盟国は現在193カ国だが、「人権」の定義は加盟国の数ほどあるといわれる。各国が独自の「人権」の定義を有しているわけだ。「人権」の定義だけではない。「テロ」問題を協議する時も「何をテロと定義するか」で加盟国は喧々諤々の議論を展開させ、普遍的なテロの定義を見つけることができないでいる。少々、悲観的な結論となるが、国連を舞台とした外交の世界では、人権問題は大国の拒否権とその定義で暗礁に乗り上げる運命を避けることができないわけだ。