第1試合は日本時間で今週の土曜日、深夜零時キックオフのクロアチア対ブラジルです。過去の対戦は、今やクロアチアの大黒柱として衰え知らずで活躍しているモドリッチが初めて代表に選出された2006年のドイツ大会だけで、このときはブラジルが3対1で勝っています。
第2試合は同じく土曜日の午前4時キックオフのオランダ対アルゼンチンです。ワールドカップだけで4回顔を合わせており、通算成績は延長までならオランダの2勝1敗1分け、PK戦まで入れると2勝2敗となっています。
たぶん、ワールドカップでの最多対戦カードではないでしょうか。
第3試合は日曜日の午前零時にキックオフのモロッコ対ポルトガル。120分間0対0で迎えたPK戦でスペインを退けたモロッコが、イベリア半島のもうひとつのサッカー大国ポルトガルに挑戦します。これはワールドカップでは初顔合わせとなります。
最後の第4試合が、日曜日の午前4時にキックオフのイングランド対フランスです。ワールドカップが始まった1930年にはすでにサッカー大国だったこの2ヵ国が、これまでワールドカップで対戦したのはたった2度で、イングランドの2勝でした。
最後の顔合わせが1982年と、40年も昔のことなのは意外です。
グループリーグを楽に突破したチームが有利か?今回のワールドカップの特徴は、とくに波乱もなく戦前の予想どおりに1~2位でトーナメントに進む2カ国が決まったグループと、本命が苦戦してどこが通過するか最終戦まで見当もつかなかったグループとにはっきり分かれたことだと思います。
そうなった理由のひとつは、VAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)にゴールライン・テクノロジーも加わって、これまでであればかなりサッカー大国に有利に吹かれていた笛が、ほぼ平等に吹かれていたことだと思います。
日本がスペイン相手に逆転勝ちを収めた三苫からのゴールラインぎりぎりのセンタリングに田中碧が膝で合わせてとった2点目も、前回大会までなら当然のようにゴールラインを割っていたとしてノーゴールに判定されていたでしょう。
審判団としては決して不公平な笛を吹いていたつもりではないでしょうが、どうしてもサッカーが強いと定評のある国とそうでない国の対戦では、先入観によって強国のプレイが有利に、弱国のプレイが不利に判定されることが多かったと思います。
そこがかなり公平になったおかげで、多くの番狂わせが生まれたのではないでしょうか。
そこで、ベスト16にたどり着くまでの経過もちょっと振り返ってみましょう。
グループBでアメリカが、そしてグループDでオーストラリアが2位に滑りこんだ以外はグループA~D、そしてGはほぼ順当にトーナメント進出チームが決まりました。ですが、グループE、F、Hは大方の予想を裏切る大混戦だったと思います。
順当だったほうでは、グループAのオランダ、グループBのイングランドは、他の3チームとのあいだにかなり力の差があり、首位通過は約束されていたようなものという印象があります。
一方、有力視されていたグループEのドイツ、グループFのベルギー、グループHのウルグアイは、結局グループステージでの敗退となりました。
グループDのフランスやグループGのブラジルのように、グループステージ最終節はターンオーバーで主力を休ませる余裕のあったチームも、順当にベスト16を勝ち上がりました。
対照的に、グループFを3戦ともベストメンバーで臨んで1~2位で通過したモロッコとクロアチアは、ベスト16戦でどちらもPK戦にもつれこみ、体力的にはかなり消耗しているはずです。
このへんの差が、準々決勝でどう出るのでしょうか。第1試合は、余裕綽々でベスト16を通過したブラジルと疲労困憊して通過したクロアチアの組み合わせです。
クロアチア対ブラジル大方の予想は、個人技ばかりではなく組織的なプレイも板についてきたブラジルが疲れの溜まっているクロアチアを一蹴するということになっているのでしょう。
でも、私はブラジルが勝つならワンサイドゲーム、接戦になったらクロアチアが勝ち、そしてこの試合の勝者がそのまま優勝する可能性が高いのではないかと思います。
サッカー大国の国籍を持ち、サッカー大国の一部リーグで活躍している選手たち(ブラジルチームはほぼ全員そうです)は、どうしても球際のせめぎ合いで、大けがをしたときの生涯所得の減り方が頭にちらついて甘くなるところがあります。
ところが、国籍がクロアチアのミッドフィールド3人は、現在それぞれスペイン、イタリア、イングランドの一部リーグ有力チームでプレイしていますが、そんな甘さがいっさい感じられません。
モドリッチ、コバチッチ、ブロゾビッチとトップ下が3人いて、同時にボランチも3人いて、合わせて3人にしかならないというぐらい、3人とも攻守にさぼることなく献身的に動き回ります。
さらに前回のロシア大会では準優勝にとどまったクロアチアが今回は優勝するかもしれない理由が、まだ20歳なのに頑健な体つきも、いかついひげ面も、自陣ペナルティエリア内での落ち着きもとうていその若さとは思えないセンターバック、グヴァルディオルの存在です。
日本戦でも、最初の1時間は前田大然、次の1時間は浅野琢磨と対峙しながら、一度もスピードで抜かれた場面なしで守っていました。しかも、折に触れて攻撃参加したときのパスセンスも抜群です。
センターバックはほんとうにきついポジションで、どんなにたびたびピンチを防いでいても、たった一度のミスが失点につながれば敗戦の責任をひとりでかぶらなければならないこともあります。
PK戦を見ていてもわかるクロアチアチームの精神力の強さは、やはり第二次世界大戦中にナチス協力国だった過去によって、ユーゴスラビア連邦内の一共和国だった時代から、国際社会で孤立することが多かった歴史によっても鍛えられたものだと思います。
ブラジル側の注目選手は、守りの硬さもさることながら、試合が膠着状態になったとき、強烈でなミドルシュートをきちんとゴールマウスに入れる技術を持っているボランチのカゼミーロかなと思います。
ただ、カゼミーロが真剣にゴールを狙わなければならないようなゲーム展開だと、有利なのはクロアチアでしょう。
だれが撃ったシュートがゴールになるかにかかわらず、得失点の多いお祭り騒ぎのような展開になれば、もちろんブラジルが圧倒的に有利なはずです。