新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、地価が下落している。「新築マンション価格も下がるのではないか」と期待している人もいるだろうが、残念ながら急激な下落はなさそうだ。下がったとしても、限定的ではないかと見られている。

地価の先行指標とされる高度利用地の地価が下落

国土交通省は全国の主要都市の高度利用地、例えば主要駅の駅前や繁華街の地価を調査している。全国の地価の先行的な動向を探るためで、その結果はやがて各地に波及していくことになる。

その最新版である2020年4月1日~7月1日の調査結果は、コロナ禍によって激変した。前年同期は「上昇」97%、「横ばい」3%、「下落」はゼロだったのが、最新版は「上昇」1%、「横ばい」61%、「下落」が38%となった。これまで上昇一色だったのが、一転して「横ばい」または「下落」になってしまったのだ。

マンション用地の仕入れ環境も様変わりしている。マンション分譲会社にとって最大のライバルだったホテル業者のほとんどが、インバウンドの消滅によって土地の仕入れを停止している。分譲会社の用地仕入れ担当者によると、「一時に比べて2割から3割程度安く取得できるようになっている」という。

地価が下がってもマンション価格はすぐには下がらない

新築マンションの分譲価格は、土地の仕入れ代金や建築費に、分譲会社の経費や利益を加味して決定される。地域などにもよるが、分譲価格のうち土地の割合は4割程度と言われている。

「その土地の仕入れ価格が下がれば、分譲価格も下がるのではないか」と思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。新築マンション事業においては、まず土地を取得してから、その土地での最適なマンション計画を検討し、詳細設計を経て着工、販売という流れになる。土地の取得から販売までは、規模が小さい物件でも1年程度で、通常は2~3年かかる。

そのため、現在土地の仕入れ価格が下がっているからといって、すぐに分譲価格が下がるわけではないのである。安値で仕入れた土地に建つ新築マンションが販売されるのは、もう少し先のことだ。

首都圏の新築マンションの平均価格は高止まり

「コロナ禍で新築マンションが売れなくなり、価格が暴落するのではないか」と期待する声もあるが、それも考えにくい。

2008年のリーマンショック後にマンションが売れなくなった時期、中堅以下のマンション分譲会社は倒産したり、撤退したりした。現在もマンション分譲を行っているのは、大手不動産会社や電鉄系、大手メーカー系列などの経営基盤が極めて安定している会社がほとんどだ。

そのため、新築マンションが多少売れなくなったからといって、投げ売りする必要はない。時間がかかっても売れるまで待つ、というのが基本的なスタンスだ。大手の中には、「焦って売る必要はない。完成後2~3年かかってもOK」とするところもある。

実際、現在の首都圏の新築マンション価格を見ると、コロナ禍で下がるどころか6,000万円台の水準で高止まりしている。

マンションの買い時に「コロナだから」は関係ない

新築マンションの購入に関して言えば、コロナ禍であたふたする必要はない。急激な価格変動は起こりにくい状況であり、動きがあるとしても小さな変化で、それも1~2年先のことになるだろう。

今から自己資金を蓄えておき、タイミングを見ていつでも買い出動できるようにしておきたい。マンションには、まったく同じ物件はない。自分たちにピッタリの物件が出てきたら、それを見逃さないように準備をしておくのが得策だろう。

 

山下和之
執筆・山下和之
住宅ジャーナリスト。1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)などの著書がある。
住宅ジャーナリスト。1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)などの著書がある。

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