首都圏のマンション価格が高くなりすぎて、平均的な会社員の収入では購入が難しく、そのためか共働き率が急上昇しているという。しかし共働き世帯には専業主婦世帯以上にローンのリスクがあるとも考えられるので、より慎重に資金計画を考える必要がある。
年収は増えないのにマンション価格だけ高騰
首都圏で新築マンションを買った人の平均価格は2001年では3,871万円だったのが、2018年には5,402万円にまで上昇し、この17年間で39.6%も上がっている。
さらに東京23区だけに限ると2001年は4,253万円で、2018年が6,158万円。その間の上昇率はなんと44.8%に達する。(リクルート住まいカンパニー『2018年首都圏新築マンション契約者動向調査』より)。
しかし、共働きで自己資金を増やし、夫婦の年収を合算して融資条件をクリアして、念願のマンションを手に入れている人たちもいる。
先ほどの調査から首都圏で新築マンションを買った人たちの共働きの割合をみると、2001年には35.4%だったのが、2018年には57.3%に増加している。
既婚世帯だけに限ると2018年の共働き割合は66.0%、子どものいない夫婦のみの世帯では83.8%に達している。この結果から、夫婦それぞれの年収が700万円以上ある、いわゆるパワーカップルでないと、都内に新築マンションを簡単には買えなくなっている現実が浮き彫りになっているのがわかる。
共働き世帯で住宅を購入するとリスクが大きくなる?
専業主婦世帯であれば、働いている人の収入が減ったり収入が途絶えたりするリスクは1人分だが、共働きでは夫婦それぞれの収入がなくなるリスクもあるため、専業主婦世帯に比べて2倍のリスクがあるという考え方もできる。
しかも共働きの場合には病気やケガだけではなく、妊娠や出産の場合には夫の収入のみになる可能性もあるのだ。
共働き世帯で住宅ローンを組む場合のリスク対策とは
収入を失っても大丈夫なくらい蓄えておく
共働き世代のリスク対策としては、まずどちらかの収入がなくなっても半年や1年は急場をしのげる手元資金を蓄えておくことだ。収入を失った人が再び収入を確保できるまでの間、その蓄えでつないでいけばいいわけだ。
2本立ての銃たうローンで11年目以降の返済を軽減
またローンを2本立てにして返済期間を変えておく方法も有効だ。どちらかを10年返済などにしておき元気なうちに返済する。
そうすれば11年目以降は返済負担が減って、どちらかの収入がなくなっても対応しやすくなるはずだ。リスクの大きい期間をできるだけ短くして、リスク対応力をつけるのがよい。
たとえば5,000万円の住宅ローンを利用する場合、返済期間35年の1本のローンだと毎月の返済額は14万5,851円。この状態でどちらかの収入がなくなると、ひとりの収入ではかなり生活が厳しくなる。
そこでローンを4,000万円と1,000万円の2本に分けて、4,000万円は35年返済、1,000万円は10年の返済期間にする。そうすれば当初10年間の返済額は20万2,559円に増えるが、11年目以降の返済額は11万6,680円に減少するので、どちらか1人の収入になっても十分対応できるだろう。
10年返済のローンは、金利の低い変動金利型を利用しても金利上昇リスクはほとんどないため、結果的に総返済額の大幅な減額にもなる。
住宅ローンは返済能力が高い時期になるべく返済する計画を立てるのがコツ
2本立ての方法なら最初の10年さえ乗り切れば、11年以降は格段にラクになる。特に小さな子どもがいて、10年後には大学への進学などを予定している家庭であれば、この方法が進学時期への対応にもなる。
2本立ての方法で進めていって、多少無理だと思ったならば返済期間を15年、20年に延ばすことも可能。本来35年返済まで可能なローンならば条件変更手続きだけでさほど手間はかからない。
最近は同じ金融機関でもローンを2本に分けて、返済期間、金利タイプなどを使い分けできるミックスタイプのローンを扱うケースも増えているので上手に活用したいところだ。
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文・山下和之(住宅ジャーナリスト)
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