2014年5月、ハンター氏はウクライナのガス企業、ブリスマ・ホールディングス社の取締役に就任し、月額5万ドルの報酬を得るようになった。同社の創業者ミコラ・ズロチェフスキー氏はウクライナ国内や国際的に汚職事件にかかわり、2014年4月にはイギリス当局からも合計2,300万ドルの資産を汚職とのかかわりで押収された。

ハンター氏の父親の当時のバイデン副大統領は2014年4月にウクライナを公式に訪問し、ウクライナへの軍事援助を協議した。ブリスマ側はハンター氏が現職の米国副大統領の息子だという点を利用し、汚職の目的にも使っていた。この点、バイデン父子側には刑法違反ともなる「利害相反」の疑いが生まれた。

ハンター氏は2013年12月に副大統領として中国を訪問した父親に同行し、中国側の投資企業「中国華信能源公司」とのコネを築いた。同華信能源の社長の葉簡明氏は中国共産党や人民解放軍の最高幹部らとの絆が太いとされたが、その後、汚職の嫌疑も伝えられた。

ハンター氏は2016年に「中国華信能源公司」傘下の「華信インフラ」と連携し、共同でアメリカに投資企業「ハドソン・ウェスト」を設立した。2017年8月から2018年9月までの間に「華信インフラ」はハンター氏に「相談料」の名目で総額480万ドルほどを支払った。

以上のようなハンター氏のウクライナと中国の企業への密着はみな父親の公的な立場を利用しての巨額の不正利得行為だと、上院委員会の報告書は指摘するのだった。バイデン氏側は不正はないと反論した。

しかし今回の中間選挙の結果、バイデン父子へのこのような疑惑が連邦議会の下院によって本格的に再調査されるという見通しが生まれてきたのである。

古森 義久(Komori Yoshihisa) 1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。

編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。