長身で頑健な体躯のマッカーシー議員は州全体では民主党支持層の多いカリフォルニア州の第20区の選出、州南部のロスアンジェルスに近いベイカーズフィールド市を中心とする地域で2006年以来、下院選での当選を重ねてきた。今回の選挙では民主党の対抗馬を2倍近い得票数で破り、9回目の連続当選を果たした。

マッカーシー議員は政治的には堅固な保守である。ドナルド・トランプ氏を2016年の同氏の大統領選初出馬から熱心に支持してきた。2020年の大統領選挙後もトランプ氏の「不正選挙」の主張に同調し、FBI(連邦捜査局)によるトランプ氏の別邸への家宅捜索にも「不当捜査」として反対してきた。

そんなトランプ支持の議員が下院での共和党の勝利を宣言したのだ。しかも民主党側でトランプ氏へのすべての面での反対を叫んできたペロシ下院議長を敗者と断じたのである。この現実は日本の主要メディアが描く「民主党の善戦」とか「トランプ氏の敗北」という構図とは異なっていた。

アメリカの連邦議会は上院でも下院でも過半数を1議席でも越えて多数派の地位を得た政党の側が議事運営のほぼ全権を手中に握れるという特徴がある。この点への認識は超重要である。

2023年1月3日からの第118会期の新議会の下院では議長がまず共和党となる。そして下院に存在する外交、軍事など広範囲の議案や決議案を審議する合計20の委員会、インテリジェンスや気候変動などと取り組む合計5つの特別委員会の委員長もすべて共和党議員が占める。

要するに下院全体の運営の主導権が多数派の共和党の手に入るのだ。共和党が下院全体としてどんな課題を審議するかを決めて、バイデン政権が出す法案にも下院全体としての反対を打ち出すこともできる。

その連邦議会での多数派の権限には法的拘束力も含まれる。聴聞会への証人を呼ぶ召喚の権限、それらの証人に宣誓証言を求める権限などである。その召喚や証言の規則に違反する場、刑事責任を問われる。

だからこそ下院の多数派となった共和党はそんな権限をも基礎として民主党のバイデン政権を攻めることになるのだ。ではなにを攻めるのか。

新議会で下院共和党の中枢となる司法委員会のジム・ジョーダン議員と政府改革監査委員会のジェームズ・コマー議員は今回の中間選挙での共和党の下院制覇が決まった直後の記者会見で新議会で追及する課題の筆頭にハンター・バイデン事件をあげた。つまりバイデン大統領の次男ハンター氏をめぐる不正疑惑を新議で追及する方針を明示したのである。

ハンター氏に関する疑惑はすでにその一部が司法当局の捜査の対象となったから「事件」と呼んでも不適切ではない。

ではこのハンター氏にからむ不正疑惑とはなんのか。改めて報告しておこう。その全体像をつかむにはアメリカ議会上院の共和党側が2020年9月に発表した公式報告書の内容をみることが最短だろう。

その情報は以下の骨子だった。