表現の場所として
現在のヒノワキッチンはこども食堂としての機能だけでなく、有料の「おかえりただいま食堂」として広く地域の需要に応えていたり、レンタルスペースやイベント企画の場所として人が集まる施設になっている。
様々な形でヒノワキッチンを訪れた人たちが、その趣旨に賛同し、こども食堂の応援チケットを購入していく。あるいは絵本作家としての奈々さんを支援する人たちがwebチケットを購入してくださり、全国から応援チケットが集まる。夕方になると、その応援チケットで子供たちに温かい食事が提供される。
終身雇用と年功序列をもとに生き方を選んできた、筆者のようなゆでガエル世代には理解できない奈々さんの生き方には、しかし40代前半あたりを境にして共感する人も多い。そういった賛同者の中には、焼き肉店舗で端材となりお客には出せず余った肉牛を持ち込んだり、品質に問題はないが形状が悪いために売り物にはならなくなった規格外野菜などが持ち込まれ、ヒノワキッチンに食材が集まる。
ゆでガエル世代が上司である団塊世代からかつてよく指摘された特徴と言えば、「個性が無い」であった。詰め込み型の教育を受け、イデオロギーを問われず、物質的に豊かだった私たちが若かった当時の姿は、ひと世代上から見ると、どいつもこいつも同じように見えるらしかった。
「自分を表現することが、生き方にとって最も大切なこと」と言い切る奈々さん。取り組んできた事業の全ては、やりたいという思いが先行しており、資金や人は後からついてくる。
彼女の直感先行型のチャレンジには、現在でも続々と賛同の声や支援が集まり続けている。これからヒノワキッチンは子供たちのために、さらに空間を増やしていく計画が動き始めている。相変わらずだが、計画実現のための資金はまだない。
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玉木 潤一郎 経営者 株式会社SweetsInvestment 代表取締役 建築、小売店、飲食業、介護施設、不動産など異業種で3社の社長を兼任。一般社団法人起業家育成協会を発足し、若手経営者を対象に事業多角化研究会を主宰する。起業から収益化までの実践と、地方の中小企業の再生・事業多角化の実践をテーマに、地方自治体や各種団体からの依頼でセミナー・コンサルティングの実績多数。
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2022年12月1日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。