COP27が終わった。筆者も後半1週間、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された国連「気候変動枠組条約」締約国会合であるCOPの場に参加してきたが、いろいろな意味でCOPの役割が変貌していることを痛感するとともに、会期を延長して土曜の深夜に合意・採択された決定文書に新たに盛り込まれたロス&ダメージ(損失と損害)に関する条項は、今後このCOP交渉の場に大きな歪や亀裂をもたらすことを予感させている。

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先ずCOPの会場であるが、シャルム・エル・シェイクの国際会議場が構える広大な敷地の中に、おびただしい数の巨大な仮設ホールが配置され、その中には締約国各国や国際機関、NGOなどが出展する数多のパビリオンが、それぞれが主催するイベントを行うイベントスペースと、気候変動対策への取り組みをアピールする企業などの展示物を並べるという、日本でいえば年末の「エコプロ展」の様相を呈していた。
日本政府もジャパン・パビリオンで2週間にわたり様々な講演、パネルディスカッションなどのイベントをホストし、その脇では日本企業によるCO2排出削減技術、気候変動への適応技術などの先端的な技術や取り組みが展示され、多くの海外からの来訪者の関心を引いていた。
一方で、本来COP交渉の主役である各国政府交渉団の部屋や、交渉に使われる会議室、総会が行われるプレナリーホールは会場のずっと奥に押しやられ、あまり人が立ち入らない領域になっていた。
従来からもCOPの場は政府間交渉と民間やNGOによる催しのハイブリッドのイベントになりつつあることは感じていたが、このCOP27の会場の構成は、その主役が、政府から民間に、交渉から実践アピールの場に移ったことを象徴している。
その観点では3万6~7千人が参加したとされるCOP27は大いに盛り上がり成功したといえるのだろう。政府を批判するデモ活動が制限された高級リゾート地に何万人もが集まって、お祭り騒ぎをするだけと批判して、グレタ・トゥーベリ女史は参加を拒否したが、国際見本市的イベントへと変貌しつつあるCOPの本質をついているのかもしれない。
さらにCOP27の会場では、主催国エジプトはもとよりUAE、サウジアラビア、インドネシア、インドといった途上国のパビリオンが巨大化していて、おおいに存在感を示していたのに対し、従来COP会場内でも特等地に大きく出展して威容を誇ったEUのパビリオンが大きく縮小し、正直言って存在感が薄れた印象をもった。
ケリー元国務長官を大統領特別補佐官として会期を通して送り込んだ米国は、入り口近くの大きなパビリオンで存在感をアピールしていたのと対照的である。欧州諸国がウクライナ紛争によるエネルギー供給危機と拙速なESG投資による化石資源インフレという国内政治問題に直面し、理想と現実の乖離に苦悩していることを象徴しているように見えたのは筆者だけだろうか。