この橋本改革ですが、私も含め多くの方に記憶があるかと思いますが、日鉄がトヨタに鋼材の値上げを申し入れたり、同社を中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄と共に訴えたりしたのです。これはその世界にいる人なら驚愕だったと思うし、トヨタの豊田社長もさぞかし怒り心頭だったと思います。が、結果は日鉄の意図した方向に動くのです。

話は少しだけズレますが、個人的にトヨタの経営は最近、シャープさに欠けてきているとみています。それが経営陣の問題か、社風の問題か、ガリバーとして汗をかかなくなったのか、末端まで胡坐をかいているのか、この点はもっと詳しい方がいると思いますので譲ります。確かに決算上の数字は外ずらの体裁を保っていますが、砂上の楼閣となる公算があります。個人的には豊田社長の経営ポジションではここから先、改革できないように見えます。日野自動車のような問題は今後再び起きかねません。そろそろ社長交代の時期にあるように思います。

さて、日鉄の橋本社長ですが、3つの改革をかかげています。2年以内のV字回復、上からの改革、最後が論理と数字が全て、であります。私は同じ経営者としてこれに最大級の賞賛を送りたいと思います。

まず、2年でV字回復というのは時間軸を切ることで自分に甘えを許さない意味です。例えば私は今、NPOの会長をしていますが、2年だけのお役目と就任時から断言しています。1年目がもうすぐ終わるところですが、改革と再構築を断行しています。あと1年で完成できる目途は立っていますが、その為にずっと走っています。これからどこまで走るのかわからないのとゴールがわかっているのではその戦略は全然違うのです。2年の改革断行はさしずめ10キロマラソンでフルマラソン分の仕事をするということでしょうか。

次に上からの改革。日経ビジネスには「改革はすべて上からであり、問われるのはマネジメント力」という例えを使っています。これを言うと反発を食らうかもしれませんが、下から上を見るのと、上から下を見るのではまるで景色は違います。車を運転するのに車高の低いスポーツカーとSUVでは運転のしやすさが全然違うでしょう。バスはなぜあの狭い車線をはみ出さずうまく走行できるのかといえば車高が高いからなのです。つまり上からはより全体を把握することができるのです。