不動産会社の役割~仲介、管理、とは?

一言で「不動産会社」といっても、その役割はひとくくりにはできません。「物件を所有する貸主(法人の場合も個人の場合もある)」「貸主から預かって物件管理をする管理会社」「物件と消費者を結びつける(いわゆる客付け行為)仲介会社」と、それぞれがメインで行う役割が異なります。

たとえば「インターネットへの物件広告や、物件の案内など、契約までの対応を行うのが仲介会社」「入居してから退去までの対応を行うのが管理会社」と考えると、イメージが付きやすいでしょうか。

物件広告を掲載するために、仲介会社は貸主や管理会社に家賃や諸条件の確認を行って最新情報を取得します。速やかに物件と入居者を結びつけるために、複数の仲介会社それぞれが1つの物件に対して管理会社に連絡をして広告掲載と並行して客付け行為を開始するのが一般的です。

そのため、Aという仲介会社の広告に問い合わせが入った段階で、Bという仲介会社では内見をしている、というケースは頻繁に起こりえます。

よって、一概に「その物件はもう決まりました」と言われた物件が、一律に悪質なおとり物件だ、と決めつけることは困難です。不動産は唯一無二であると同時に、リアルタイムで情報を取得できない構造上の問題があるからです。

不動産IDでおとり問題は解決するのか?

ここ数年、国土交通省(以下、国交省)を中心として不動産IDのルール化が検討されています。不動産IDによって、おとり問題が解決する、という見出しの記事が記憶にある人もいらっしゃるのではないでしょうか。

不動産IDとは、簡単に説明すると「物件を特定するためのユニーク番号」です。ただ単にユニーク番号を採番するのでは意味がなく、採番した番号を活用するための仕組みをセットにする必要があります。逆に「その仕組みがなければおとり物件の問題は解決できない」と言っても良いでしょう。

たとえば、全ての物件に不動産IDを発番して格納できるデータベースを作成し「管理会社も仲介会社も不動産IDを利用して成約、申込、退去といった情報の受け渡しを行い、ポータルサイトへの掲載指示を出せる」という仕組みがあれば、管理会社や仲介会社間でもリアルタイムに情報の利用ができるようになり、そもそも成約済み物件がポータルサイトに掲載され続ける、ということがなくなるでしょう。

現状、国交省で不動産IDルールが整備されており、今後、仕組み化も慎重に検討されていくものと思われるため、業務改善のためのIT化に留まらず、構造改革とも言えるDX化に向けた一歩となることを強く期待しています。