神奈川県の小田原市の「なりわい文化とまち歩き観光を考える」という催しに行ってきました。なりわい(生業)とは、辞書によると「生活を営むための仕事」とあります。
今回参加したのは、小田原に古くからある海や山、里にまつわる産業を観光素材としてスポットを当てたワークショップです。
小田原は箱根の玄関口とは言うものの、これまで通過してしまいがちな町という印象でした。今回の催しが、小田原という町を詳しく知るきっかけになったのですが、歴史的な背景や、そこで栄えた産業を知ることで、小田原の魅力の一端を垣間見られたと思っています。
そんな小田原の魅力が少しでも伝わればといいな、という気持ちでレポートします。どうぞ最後までお付き合いください。
小田原ってどんなところ?
小田原は、戦国時代に後北条氏の「城下町」として発展し、江戸時代には東海道屈指の「宿場町」として栄え、明治期には政財界人や文化人たちの「別荘、居住地」として愛されてきた、神奈川県西地域の中心都市です。
主な見どころは、戦国時代に日本最大の城郭を誇った小田原城や、秀吉が小田原城を落城させ全国統一を果たした一夜城、小田原漁港、3万5千本の梅の花を誇る曽我梅の里などがあり、名湯箱根温泉への玄関口になっています。

かまぼこ通りの老舗「伊勢兼(いせかね)」

小田原駅を降りたら小田原城がある東口から国道1号線(東海道)を更に海沿いに入ったところにかまぼこの本店が軒をかまえる「かまぼこ通り」があります。
小田原駅から蒲鉾通りまでは直線でおよそ1kmです。蒲鉾通りはかまぼこ屋さんが軒を連ねているわけではありませんが、干物屋、鰹節屋、料亭、飲食店、和菓子屋など30店舗あまりが点在する1つの通りです。

その通りの東側に、今回工場を見学をさせていただいた天保元年(1830年)創業の老舗、伊勢兼(いせかね)があります。
こだわりの製造現場

すり鉢で練られている新鮮な魚のすり身。
伊勢兼には5つの石のすり鉢があります。鮮度の良い魚を長時間練る作業は、鉄やステンレスではなく外気温の影響を受けにくい石のすり鉢を使用しています。さらに魚の種類や脂の乗り、外気温、湿度によって5つのすり鉢を使い分けているとのことでした。

すり身になったものを絞り金で板に乗せ、自動で決まった長さに切られていきます。
さて、ここでクイズです!
(問題)かまぼこの板って、何の役目があるんでしょうか?
※ヒント:やわらかい魚のすり身を安定させるまな板の役目だけではないのです。
さぁ、わかりますか?

(答え)天然の防腐剤の役目をしているんです!
板の素材には「天然のモミの木」を使っているそうです。昔の旅人が箱根の峠を越えて行くときの知恵なんですね。ちなみに、かつては箱根の山のモミの木を使っていましたが、現在はカナダから輸入したモミの木を使用しているそうです。
モミの木を使用する理由は、木のヤニが出ない、臭いがない、適度な硬さで水分を調整する働きがあり、品質保持には欠かせないらしいです。また、かまぼこ屋さんごとに魚や材料の配合が異なるので、板の厚さもお店ごとに異なるのだとか。だからお店の焼き印を付けているとのことでした。
製造の工程は機械化されているものの、そのこだわりは創業から変わっていないそうです。

<蒸し器に入れるところ>

<ラッピングをする機械>
現在、かまぼこ工場の一般向けの見学ツアーはありませんが、かまぼこ作りにかけるこだわりを感じていただければと思います。
伊勢兼 基本情報
- 住所:小田原市浜町3-15-5
- TEL:0465-22-3375
- 営業時間:9:00~17:00
- 定休日:毎月第3水曜日、元旦
- 公式サイト:小田原 伊勢兼
