誹謗中傷を防ぐ対策はあるのか?

それでは、誹謗中傷の被害者・加害者にならないための対策はあるのでしょうか。政府、コミュニティ運営企業、個人それぞれの対策方法を解説します。

政府の対策

インターネット社会でのコミュニケーションを起点としたトラブルが起きるたびに、政府が解決に向けて法改正を進めたり、罰則を設けたりしています。2020年5月にリアリティー番組の出演者が、誹謗中傷が原因により死去したことで、政府の動きも加速しました。

たとえば、2020年8月に総務省は「プラットフォームサービスに関する研究会 インターネット上の誹謗中傷への対応の在り方に関する緊急提言」を公表をしました。

これは、2020年7月に「インターネット上の誹謗中傷への対応の在り方について」意見を募集し、事業者や団体、個人などから寄せられた208件の意見と研究会での議論の結果を踏まえた提言です。

また、2022年10月には、被害を受けた人が発信者を特定する手続きを簡素化する法の改正が行われました。これまで発信者を特定する手続きは、SNS事業者と通信事業者などからの開示といった2回の裁判手続きを経ることが一般的でしたが、これを簡素化し、一つの手続きで行うことが可能となりました。

このような法改正は、煩雑な手続きが理由で損害賠償請求を諦めていた被害者の救済につながりますし、「それぞれが自分の発言に責任を持つ」という社会変化の現れでもあります。

コミュニティ運営企業の対策

コミュニティ運営企業にも誹謗中傷対策への積極的関与が求められています。プラットフォーマーとして場の提供をしているからこそ、誹謗中傷への対策に責任を持ち、その場所を安心安全にする取り組みは必要です。

対策として、「利用規約やガイドラインを整備・公表して、モニタリングする仕組みをつくること」や、「ユーザーから通報が受けられるシステムを構築し、通報などに対応できる社内体制の確立」があります。

また、誹謗中傷への対応と表現の自由へのバランスを考慮した対応としては、「ユーザーが投稿する際に投稿内容の再考を促す機能を装備すること」も有効です。

コミュニティを運営する大手プラットフォーム事業者などは、コメントポリシーを制定したり、誹謗中傷などの相談を受け付ける相談窓口を、期間限定で無償に開設したりしています。

個人の対策

ニュースに取り上げられる誹謗中傷は、芸能人が告訴して加害者が逮捕されたり書類送検されたりするような誹謗中傷が多いため、中には「自分には関係ない」と思っている人もいるでしょう。

SNSで発信すれば、誹謗中傷の被害者になるリスクがあります。逆に、意図せず加害者になる可能性もあるため「いつか自分の身に起こることかもしれない」といった“自分事”として捉え、インターネットと向き合う意識が大切です。

自分がSNSに投稿するときは、その内容は第三者が見て不快な思いをしないかどうか、一瞬、立ち止まってから投稿をしてほしいと思います。

また、SNSを含め、インターネットは多種多様な意見の集まる場所であり、誹謗中傷や批判的な意見はその一部に過ぎないという意識を持つことも大事です。

批判的な人の声は大きく聞こえますし、目立つので大勢の人が自分に向けて誹謗中傷をしているように見えてしまいます。しかし、実際は大勢の中の「一部」の反応であって、それがすべてではありません。

多種多様な意見を適切に受け止めることが大事なことであり、自分の声に賛同や応援してくれる人もいることを心に留めてほしいと思います。

一方で、誹謗中傷のニュースを見たり聞いたりするたびに、心を痛めている人もいるでしょう。

そんな人は、自分が不愉快だと思った情報をブロックするという方法を試してみましょう。自主的に問題を見ない、問題から逃げていると捉えられてしまうことがありますが、自分の心を守るために「心地がよくない情報を遮断すること」はときには必要だと思います。