日本にユニコーンが少ない理由は「起業」のしづらさではない?
日本においてスタートアップを取り巻く環境はどのようになっているのだろうか。実のところ、日本ではベンチャー企業の開業数が海外と比べてもそれほど低くない。
「日本は開業率(=開業数を総企業数で割った値)が低い」と言われるが、それはこの計算の「分母」にあたる総企業数が多いことが要因であり、人口あたりの開業数は、アメリカよりも日本のほうが多い(人口1000人当たりの開業数は、米国1.6社、日本1.8社。人口1000人当たりの総企業数は、米国19社、日本35社)。
※中小企業白書 2022より
開業が少なくない日本で、ユニコーンが少ない・米中にユニコーンが集中する背景には、巨額の資金フローがある。ベンチャーキャピタル(以下、VC)の年間調達額は、アメリカが14兆円、中国が3.5兆円なのに対し、日本ではたった2,700億円。
もっとも日本だけが少ないわけではなく、欧州全体でもVCの年間資金調達額は1兆円にすぎず、米中だけが突出して額が大きいのだ。
ベンチャー企業がサービスを提供し、資本市場においてVCに流れ込む巨額の資金フロー。この大きな「市場」が、ベンチャー企業を短期間で成長させ、ユニコーン企業へと変身させる要因なのではないだろうか。
今あるVCの構造がユニコーン企業を生み出す要因になっていることから、この構造自体を短期間で変えることは現実的ではない。今後日本では、単純に「ユニコーンを増やす」とは違った選択肢を選ぶ必要があるのかもしれない。
現在、日本企業のイノベーション創出において、「新しい技術・知見獲得の機会不足」「人材が流動しにくく、インセンティブなど制度の整備が遅れていること」「オープンイノベーションに関する理解の不足」など、さまざまな課題がある。
ネガティブな情報が多いものの、日本は研究者数や従事者数が世界の中で高い水準を維持しているのは事実だ。これからは、その強みをリソースとして十分に活かす術や方策を考えていくことが大事になってくるだろう。
参考:NEDO「日本におけるイノベーション創出の現状」
<著者プロフィール>
森一真
リブ・コンサルティング 事業開発事業部DXチーム
シニアコンサルタント公認会計士協会準会員。新卒で財務・M&Aコンサルティング会社に入社し財務コンサルティング業務を担当。その後、ゲーム会社にてスマホゲームのディレクター兼アナリストとして顧客データ分析、ゲーム企画、UI・UXプランニング、マーケティング業務を経験。
前職のデジタル系コンサルティング会社では、 国内大手データホルダーと協力しデータ活用デジタルマーケティングコンサルティングを実施。その後、同社においてAIコンサルティング新規事業の立ち上げを担当。コンサルティングの傍ら、AI系大手ベンダー複数社と連携しソリューション企画開発や登壇活動を行う。
リブ・コンサルティングではデジタル領域事業開発コンサルティング全般を担当。コアスキルはソリューション企画。特に、データ・AIのビジネス活用に強み。