組織戦略の弊害

ここまで事業戦略観点でのレガシーに言及しましたが、組織戦略においても至るところでレガシーさが目につきます。今回は業務面の細かな点は割愛し、本質的な部分のみ書いています。

属人的な営業・プランニング

営業や接客スタッフの介在価値の高い(=優秀な営業とそうでない営業で成果に差が出やすい)BtoC領域においては多く散見される事象ですが、ウエディング領域も多分に漏れず属人的な営業によって成り立っているケースがほとんどです。

結婚式は購入するタイミングが一度きりで、無形商材でありながら、個人が購入する商品の中でも上位に入る高額商材です。それを3時間程度の接客で契約できるウエディングプランナーのスキルは非常に高いと言えます。

一方で、経営へのインパクトが大きいからこそ、優秀なプランナーを置き換えるような手法へのチャレンジがなされずに、属人的な営業に依存した構造が未だ続いています。

女性が活躍する市場でありながら、女性が活躍し続けにくい組織構造

ウエディングプランナーという仕事は、労働集約型で、婚礼実施がある土日の労働時間が長く、体力的にも精神的にも非常にハードです。一生の仕事として続けられるかというと、それを叶えられる企業は多くはないのが現状です。

また結婚や出産というライフステージの変化によって、プランナーを続けられず、やむなく卒業された方も多くいらっしゃいます。

経営的にも、顧客満足的にも、性別問わず優秀なウエディングプランナーが長く活躍し続けられる環境は必須であるにもかかわらず、それに応えられていないというのが現状です。

最近では子育てをしながらプランナーを続ける人も増えていますが、まだまだ少なく、根本的な原因として、属人的な業務体制が挙げられます。

接客・プランニング以外のプランナー本人でなくともできる業務をシステム化するだけでも大幅に業務量は改善されるはずですが、他産業と比べるとそのような効率化は遥かに遅れています。

部分的にシステム化されていても、本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)にはほとんど至ってないのです。

閉鎖的な採用環境

DXが推進されない理由はさまざまですが、その要因の一つに、ウエディング企業の業界外からの採用力が挙げられると考えています。

以前より下火とは言え、新卒市場ではウエディングプランナーは人気の職種ですが、中途採用市場では、「労働集約型のレガシーな環境で、経済条件も決して良くない」という印象が強く、母集団を十分に形成できていません。

業界外からの採用状況を改善しないまま、新卒採用と業界内の人材のみで完結し続けた結果、業界外との採用環境のかい離が大きくなり、ガラパゴス化しているのが現状です。

特殊な業界だという免罪符のもとに、レガシーな組織環境を当たり前として、変化を拒み、業界外を断絶し続けてきたことが、レガシーから脱却できない原因そのものになっています。

DXの推進

一方で、介在価値が高い産業であるからこそ、DXの余地(=成果の幅)が大きいと言えます。仕組みや自動化など、部分的にシステムやテクノロジーに置き換えることで、ウエディングプランナーは介在価値の高い領域にリソースを割くことができるようになります。

また企業は、ウエディングプランナーの負荷を軽減することで、ライフステージの変化に合わせた働き方を提供できるようにもなります。

実際にDXを実現している企業では、接客や打合せにシステムを導入し、接客以外の業務は役割分担したりアウトソースしたりすることで、ウエディングプランナーの生産性を改善しました。こうした企業は、全体のパフォーマンスが高く、業界内外からの採用力も高まり、好循環へと転換しています。

当社もDX支援に関わらせていただくことがありますが、手前味噌ながら、成否の鍵はブライダルとテクノロジーの知見を両方持ち合わせていることで、現場、人を理解したうえで、どこで介在価値を最大化させ、どこを省力化できるのか、事業・組織の両面を鑑みたうえで解決策を提示し、実行の伴走までできるかどうかだと捉えています。

これまで手つかずだった部分が多いからこそ、変化のインパクトは大きく、まだまだ成長の余地のある産業であると言えます。