3.計画的に減量しよう 

続いての減量の原則は、いかに計画的に行うか!ということです。ある日突然始める、頭打ちがきてしまったから急に何かやり方を変えてみる、停滞期に入ると焦って色々な人にアドバイスをもらって、あれやこれや試していくというケースを見かけますが、残念ながらまず失敗します。やり方については、例えば今年はこの人のやり方でいくんだと決めたら、貫き通さないといけません(もちろん信頼できる人のやり方でなくてはなりませんが)。
減量は山登りと似ていてやり方はひとつではなく、いくつものルートがあります。Aのルートで山を登り始めたのに、急にBのルートに変えたら、なかなか山頂にたどり着けませんよね。それは、言い換えれば計画性がないということ。船頭多くして船山に上るという諺がありますが、減量で失敗する典型的なケースかもしれません。
脂質カットをしていて停滞期に入ってしまった。我慢できずに糖質制限で上手くいっている人のアドバイスを求め、糖質制限を始める。最終段階に入って塩分カットをし始めたけれど自分のイメージのようにうまく仕上がっていかない。すると不安になって、普段塩分カットを取り入れていない人の意見を聞いて塩分カットを中止する。これは何が正しいかという問題ではなく、効果が現れるのにはある程度の時間を要するという事と、どんな取り組みも身体が適応した時点で一定の停滞期が訪れるという点を理解した上で取り組んでいく必要があるという事です。
減量は計画的に行うことと、そのなかで、プレ減量のように、PFCバランス、睡眠、水分などを整える期間をつくることが大切です。計画性に加えて、自分がもっている減量の「カード」をいっぺんに出さないこともお勧めします。停滞期に入ったからといって、ひたすら耐えるという意味ではないのです。当然、停滞期を想定していくつかのカードを準備していく必要がありますが、これを一度にすべて出してしまわないという事も計画的という原則に含まれます。
ビギナーの方は、あれもこれも我慢して、あれもこれも頑張ってと、一気にやってしまう傾向があります。しかし、必ず身体は適応して停滞します。減量の場合は、糖質も脂質も抑えて、トレーニングも有酸素運動も頑張ってと、いっぺんにやると、身体に大きな負荷がかかってしまいます。さらに、頭打ちがきたときにもう開ける引き出しがなくなって終わってしまうのです。そこで、例えば有酸素運動は最初はやらないでおいて、ほかのカードで取り組んで、減量の後半から有酸素運動を取り入れるとか、カードを小出しにしていかないと、後からやることがなくなってしまいます。
減量を進めていけば必ず途中何度もの停滞期が訪れます。これは減量という負荷に身体が適応した合図でもありますから、その時点で新たな効果的な負荷を与えていかなくてはならないのです。チートディなどはその一例とも言えます。計画性の元、このあたりで停滞したら有酸素を始めるとか、このあたりから週に一回のチートディを導入するとか、はたまたサプリメントをこのあたりで投入するなど、計画性をもったうえでカードを温存しながら進めていってください。

4.メカニズムを理解しよう

もう一つのコツは、メカニズムを理解すること。作用機序といいますが、例えばサプリメントにしてもなんのためにそれを飲むのか、なぜこれが筋肉の分解を抑えるのか、どの成分がどんな作用機序で働いてくれるのかを理解しましょう。トレーニングも一緒です。なぜこの類のウエイトをするのか、有酸素をするのか。自分が取り組むすべてのことをなるべく理解した上で行うと、不思議なことにつらさが軽減されます。普通だったら「やりたくないな」と思うことも、やる理由がわかればやる気が出るからです。理解できれば、前向きな気持ちになるし、飲み忘れもなくなり、自分なりのチェックポイントも見えてきます。
ボディビルは最近でこそSNSなどの影響もあって随分と情報を手にしやすくなりましたが、以前はボディビルジムで諸先輩や会長から指導を受けなくては何をやっていいのか分からない世界でもありました。それはトレーニングのみならず、減量にしても同様です。単に体重を落とすという減量ではなく、見映えを最大限によくするための減量でもあり、またその見映えというもの世間一般のいい身体という次元ではなく大会当日に最大限見映えするようにと、実にマニアックな世界でもあります。
それが故に一般的なマニュアルや参考書的なものはほとんど存在せず、結果として経験者から教えを乞うという流れになっていました。それはそれで大変意義深いのですが、気を付けなくてはいけないのはメカニズムを理解しないまま、言われたからやるというケースが生まれる点です。計画性ともかかわってきますが、なぜそれをするのかという理由を自分なりに理解して納得して取り組む事が好結果にもつながっていきます。