個人事業主が生前にできる「死亡時の対策」5選
個人事業主が亡くなると、遺族や相続人に大きな負担をかけてしまうことが分かりました。しかし、個人事業主が生前からしっかりと「死亡時の対策」を講じておけば、遺族や相続人の負担はかなり軽くなります。
ここでは、個人事業主が生前にできる「死亡時対策」をまとめました。
対策1. 遺言を残す
基本中の基本ですが、遺言をしっかり残すことは非常に大切です。仮に20代、30代でも亡くなるケースは当然あり、早いうちから準備をしておきましょう。
遺言は書面で残すことが一般的で、盛り込みたい内容は以下の4点。
- 作成日と氏名(自署、押印必須)
- 資産と負債の一覧(財産目録として別途添付推奨)
- 財産の相続先/相続割合(遺留分を考慮する)
- 遺言執行者(遺言を実現するため死後に動いてくれる人)の指定
なお、日本には大きく分けて3通りの遺言書の書き方があります。若いうちに保険として書く場合は、負担面を考慮して「自筆証書遺言」を法務局に預けるくらいがちょうどいいでしょう。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
作成者 | 本人が手書き | 公証人 | 本人(手書きでなくてもOK) |
作成場所 | 自由 | 公証役場 | 自由 |
証人 | 不要 | 2人以上 | 3人以上(うち公証人1人) |
費用 | 作成時は無料(開封時に別途検認費用が必要) | おおむね2~10万円 | 11,000円(開封時に別途検認費用が必要) |
検認 | 必要(ただし、法務局での保管制度を使えば不要) | 不要 | 必要 |
メリット | ・手軽に書ける ・費用が安い ・保管制度を使えば偽造や紛失のリスクがない |
・偽造やトラブルのリスクが極めて低い ・検認が不要 ・公証人が作成してくれる |
・遺言の中身を誰にも知られずに済む ・パソコンで作成可能 |
デメリット | ・遺言の効力が保証されない ・手書きする必要がある |
・費用が高額 ・作成に手間がかかる ・証人が必要 |
・検認が必要 ・遺言の効力が保証されない ・偽造や紛失のリスクがある ・証人が必要 |
対策2. エンディングノートを残す
個人事業主にとって、ある意味遺言以上に大切なのが「エンディングノート」。エンディングノートには、例えば以下のような情報を記入すべきだとされています。
- 自分の基本情報(本籍地、基礎年金番号など)
- 財産、資産
- 各種IDやパスワード
- 医療、介護について
- 葬儀、お墓について
- 各種連絡先
これらの情報があるだけで、個人事業主の死亡時手続きはグッと楽になるでしょう。
エンディングノートは、市販のものを買って書けば「書くべき項目」に悩まず済みます。ただ、筆者はわざわざノートを買って書くのが面倒くさかったので、妻とのLINEのノートに簡易的なエンディングノートを書き込んで共有しています。
対策3. 死後事務委任契約を結ぶ
自分の死亡時手続きが「明らかにハードだ」と分かっている個人事業主は、生前に「死後事務委任契約」を結ぶことでも対策できます。この契約は、文字通り「自分が死んだ後の事務手続きを他人に任せる」というもの。
- 行政手続き
- 周囲の人への連絡
- 各種契約の解除
- デジタル情報の整理
などを、相続関連以外の大半の手続きを信頼できる人や、弁護士などの専門家に委任できます。「独身で近くに家族がいない」「同性や事実婚のパートナーがいる(事実婚の場合は法定相続人にはならず、関われない死後事務も多い)」といった事情があれば、利用を検討してみるのもおすすめです。
対策4. 相続税対策をする
相続が楽になるわけではありませんが、「できるだけ多くの財産を遺族に残したい」「相続税を払いたくない」と思う方は多いでしょう。世間でも数多くの相続税対策ノウハウが出回っているため、資産が多い場合にある程度の相続税対策をしておくのはおすすめです。
個人事業主に特に関連するところでは、ある程度稼げるようになった時点で法人化してしまうのが一番の相続税対策とされています。相続税は「個人の財産」に課税されるものなので、法人化することで個人の財産を減らし、相続税の課税資産を圧縮できます。
対策5. 万が一の事態について話し合っておく
一人でできる準備もありますが、やはり万が一の事態について家族などと話し合っておくことは大切でしょう。「寂しい気持ちになるからイヤ」という意見も分かるものの、事前に話し合いをしておくとで万が一の際にやるべきこと、事前に準備しておくべきことが整理できるでしょう。
まとめ
ここまで、個人事業主の相続/死亡時手続きについてまとめてきました。
まだ20代、30代の方は、「終活」について考えることはほとんどないかもしれません。しかし、人生は何が起こるか分からないもの。遺言やエンディングノートの作成を先延ばしにしているうちに、不慮の事故によって……ということも無いとはいえません。
一気にすべての準備を済ませる必要はありませんが、時間をみつけてなるべく多くの準備を済ませておくと、より安心して働けるようになるでしょう。
(執筆:齊藤颯人 編集:少年B)
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