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そして町田の聖地へ
90年代への愛着はノスタルジーなのか

そして町田の聖地へ

小田急線・町田駅から歩いて数分の場所にある「バックストリート」。なかに入ると壁と天井近くを埋め尽くすウエアとバッグなど膨大な数のアウトドア用アメリカ古着が視界を占めます。とくにパタゴニア製品のアイテムが目立ち、90年代に着ていた懐かしいウエアや破れるまで使いこんで今は手元にないバッグもストック。それらの状態の佳さと、お手頃な値段が付けられていることにテンションが一気に上がりました。

スタッフ自ら2カ月ごとに北米西海岸へ出向く仕入れの旅のほか、日本有数のバイヤーやコレクターの力も借りて集めたパタゴニア旧製品をはじめ、丈夫で機能的なアウトドアウエアやバッグ類は量だけでなく、質の高さにも心をつかまれました。ハードに使われがちなアウトドアウエアなのに、これほどの良品を見つけてくるのは相当な困難だろうと想像しつつ店主の布施さんに尋ねました。「私が入手したようなデッドストック品はまだ発掘できるんですか?」と。

「アウトドアものは遡れても5年、10年が限界といわれているんです。今後、90年代のデッドストックの発掘は100%無理と言いきってもいいくらい。今年の夏に2010年製の新品が欲しいと言われたら可能かもしれないけど、95年のデッドを見つけてと頼まれてもそれは物理的に無理です。限界があります」と布施さん。アウトドアの古着は現地でも安くないうえに着こまれたものが多いから状態も基本はよくない。

「探す手間はすごく大変なわりに、商売的にはおいしくない」と布施さんは苦笑いします。

MADE IN USAの逸品ウエア&パックが、個人的に世界一の品揃えと崇敬する町田の古着店「バックストリート」
(画像=『たびこふれ』より引用)

店にはウエブに載っていない古着もたくさん。できれば足を運んで買うことをお勧めする

90年代への愛着はノスタルジーなのか

それでも布施さんは心底、パタゴニアが好きだからこの仕事を継続しているのでしょう。パタゴニア・フリークを唸らせる品揃えからは旧製品への愛情と深い見識が伺えます。それで嬉しくなり、本心が口に出てしまいました。「90年代の製品は佳かったですね!」と。

すると布施さんは「それは齢相応の感覚でしょう。僕らが20歳のとき、40歳の人が着ているものを見て意味がわからなかったし、世代的に90年代の服で生きてきたから佳いと思っているだけで、今の物が完全に駄目だとは僕は言わない。佳いものかどうかの価値基準は世代ごとに違うし、正解はない」と諭すように答えました。

自分が慢心を抱いていたことに気づかされショックでしたが、「バックストリート」の商品群に心地よさを覚えるのはまぎれもないこと。郷愁だとしても、自分は90年代のパタゴニア製品が好きでたまらない。そんな絶対的な嗜好が軸にあることは幸運なのではと、自分の心に問いかけたのでした。

MADE IN USAの逸品ウエア&パックが、個人的に世界一の品揃えと崇敬する町田の古着店「バックストリート」
(画像=『たびこふれ』より引用)

2003年製の『パッカーウェアシャツ』。縮緬のオーガニックコットン生地は天然クーラーのごとく涼しい。この色と柄をボロボロになるまで愛用していた。スリムな現行品と違い、ゆったりした「リラックス・フィット」のフォルムも快適。野暮ったいといわれても楽ちんが一番なのだ。

MADE IN USAの逸品ウエア&パックが、個人的に世界一の品揃えと崇敬する町田の古着店「バックストリート」
(画像=『たびこふれ』より引用)

1995年製サニーストライプ柄の『ヘビーフランネルシャツ』を入手できた興奮が古着を見て蘇った。人気の柄はカタログが届いたら即購入しないと完売してしまったのだ。

MADE IN USAの逸品ウエア&パックが、個人的に世界一の品揃えと崇敬する町田の古着店「バックストリート」
(画像=『たびこふれ』より引用)

豊富な経験と知識を頼られて「バックストリート」はマニアックな特集記事に寄稿したり、稀少な旧製品を貸し出すこともたびたびあるそう。