子の法定相続分を詳しく解説
被相続人の子には、「実子」「養子」「非嫡出子」などのさまざまなパターンがあります。被相続人が離婚をして再婚していた場合、「再婚相手の連れ子」がいるケースもあるでしょう。子の立場によって、法定相続分の割合はどう変わるのでしょうか?
養子の場合
相続においては、養子も実子と同じように法定相続人として扱われます。相続人が被相続人の配偶者と養子の場合、相続割合は1/2ずつです。
ただし、以下の計算をする場合は、法定相続人に含められる養子の数に限りがあります。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
- 相続税の基礎控除額
- 生命保険金の非課税限度額
- 死亡退職金の非課税限度額
- 相続税の総額の計算
実親との親子関係を断ち、養親との間に法的な親子関係を結んだ「特別養子縁組」の場合は、実子と同じ扱いになるため、全ての法定相続人の数に含まれます。
また、特別養子縁組の養子は養親の法定相続人にしかなれないのに対し、実親との関係性を維持したまま養子となった「普通養子縁組」の養子は、実親と養親の両方の法的相続人として認められます。
出所:No.4170 相続人の中に養子がいるとき|国税庁
非嫡出子(婚姻していない男女間の子)の場合
非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同等です。被相続人の配偶者と非嫡出子が相続人になる場合、それぞれが遺産の1/2を相続します。配偶者・嫡出子・非嫡出子の3人が相続人になる際の法定相続分は以下の通りです。
配偶者:1/2
嫡出子:1/4
非嫡出子:1/4
2013年12月5日に民法の一部が改正される前までは、900条の規定により「非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2」とするルールでした。しかし嫡出子と非嫡出子の法定相続分に差があるのは、憲法14条の「法の下の平等」に反するとして、同等に扱う民法改正が行われたのです。
出所:日本国憲法14条 | e-Gov法令検索
出所:民法900条 | e-Gov法令検索
父母が異なる子の場合
父母が異なる子の場合は、「被相続人との間に法的な親子関係があるかどうか」がポイントです。
被相続人に離婚歴があり、元配偶者の間に子が1人いると仮定します。被相続人が亡くなった場合、元配偶者との間の子は離婚して疎遠になっていたとしても、必ず法定相続人となります。
一方、同居しているかどうかにかかわらず、再婚相手の連れ子は法定相続人にはなれません。実子と同じように再婚者の連れ子にも相続をさせたい場合は、連れ子を養子にするか、遺言書に明記する必要があるでしょう。
その他のケース
被相続人にマイナスの遺産が多い場合、相続放棄をする人が出てくる可能性があります。相続放棄をすると、法定相続人の順位はどう変わるのでしょうか?
相続放棄した者がいる場合
「相続放棄」とは、被相続人の財産の一切を引き継がないことです。相続人は「自己に相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」であれば、相続放棄を選択できます。
相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものと見なされます。したがって、第1順位の全員が相続放棄をした場合には第2順位に相続権が移り、第2順位の全員が相続放棄をした場合は第3順位へと相続権が移動するのです。
被相続人に配偶者と子(長男・次男)がいると仮定しましょう。本来であれば、配偶者が1/2、長男が1/4、次男が1/4を相続しますが、長男が相続放棄をした場合、配偶者が1/2、次男が1/2を相続します。
なお、相続税の計算をする際は、相続放棄をした人も法定相続人に含めて計算する点に注意が必要です。