山、滝、森などの自然に囲まれた神秘的な信仰の地「那智」は、日本の始まりにも大きく関わりのある深い歴史を持つ和歌山県の名所です。「那智の滝」「熊野那智大社」をはじめとする見どころを通して、那智の魅力をお伝えします。
目次
1. 熊野那智大社のご神体「那智の滝」とは?
2. 世界遺産・紀伊山地の霊場と参詣道の構成遺産「熊野那智大社」とは?
1. 熊野那智大社のご神体「那智の滝」とは?

観光地として多くの人が訪れる「那智の滝」ですが、那智の滝自体が崇拝される対象であるということは、あまり知られていません。そもそも那智の滝は熊野三山(くまのさんざん)の一つ、熊野那智大社に祀られたご神体。熊野三山とは熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)、熊野那智大社、熊野本宮大社の三社を総称した呼び名です。
那智の滝が熊野那智大社のご神体であるように、熊野速玉大社は神倉山にあるゴトビキ岩、熊野本宮は周囲の川や川洲を御神体としており、滝・岩・川がそれぞれの神として祀られています。
速玉は過去、那智は現在、本宮は未来を表すと言われていて、過去を癒し、現在の恐れや不安をなくし、未来の喜びを創造する。それが熊野三山という場所なのです。
熊野は森が深く、古くから「いにしえの地」と呼ばれ、亡くなった先祖が宿る場所と考えられています。そこに行って戻ってくることは「再生」を意味し、これまでの罪や穢れ(けがれ)を落として生まれ変わることができると信じられているのです。
2. 世界遺産・紀伊山地の霊場と参詣道の構成遺産「熊野那智大社」とは?

那智の滝及び熊野那智大社は、ユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成遺産に指定されました。今では日本全国からの参拝客で賑わうとともに、世界各国からの観光客も訪れる場所となっています。
熊野那智大社の主祭神は熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)。夫須美は「結び」を意味することから、多くの人がご縁や願いを「結ぶ場所」として参拝しています。また、熊野那智大社の別宮として那智の滝を祀る「飛瀧神社」もあります。
熊野那智大社は仏教における「観音信仰」の聖地でもありました。インドの僧・裸形上人(らぎょうしょうにん)が那智の滝で修行を積み、草庵を作ったのがこの熊野那智大社の場所だったのです。今では「那智山青岸渡寺(なちさんせいがんとじ)」と呼ばれ、熊野那智大社の神社の隣に寺院として姿を留めています。
那智山青岸渡寺の赤い三重塔は美しく自然に映え、那智の滝を背後に写真を撮る人が後を絶たない有名な撮影スポットです。