会話が生まれるオフィスをつくる「Bamiel」
——Bamielとは、どのようなプロダクトなのか、お聞かせいただけますか?
水本:Bamiel は、会話が生まれるオフィス運営を効率化するDXソリューションです。当社がこれまでにのべ4万7000人以上を分析してきた音環境分析を応用し、会話量を分析することで「場を見える化」します。
会話量が多ければコミュニケーションが活発、逆に少なければコミュニケーションが少ないとし、オフィスの活性化に向けた施策を検証することが可能です。
具体的な方法としては、オフィスなど計測したい空間に専用マイクを設置します。特別な工事は必要なく、ブラウザとインターネット回線があればすぐに使い始めることが可能です。
専用マイクには、複数のマイクがついた録音デバイスを使用しています。マイクの位置によって、同じ音でもたどりつくタイミングが少しずつ異なりますよね。このような時間差のようなものを組み合わせることで、どの方向から音が来たかがわかるのです。
——「場を見える化」というと、カメラなど視覚的な方法をイメージするのですが、どうして会話量なのでしょう。
水本:確かにカメラなども「場を見える化」する有効な手段のひとつですが、同じ空間内にたくさんの人が写っているからといって、コミュニケーションが活発とは限りません。
では、会話内容をテキスト化してはどうかと思う人もいるでしょう。しかし、わざわざテキストを読んで盛り上がっているかを判断するのは大変ですよね。プライバシーの問題もあります。
会話量なら会話の継続時間だけをみればいいので、わかりやすいのです。
——Bamielでは、プライバシーは守られるのでしょうか?
水本:Bamiel が計測するのは、会話内容ではなく会話量です。音声データは専用マイク内でエッジ処理した後に自動で破棄するため、会話内容はアップロードされません。どの方向に音があったかはわかりますが、それ以外の情報は何もわからないのです。
プライバシーは完全に守られているので、安心してお使いいただけます。
データを取得するだけでなく、実際の施策につなげやすい
——会話量を見える化し、それからどうオフィスの活性化につなげていけるか、教えてください。
水本:Bamielには、主に2つの機能があります。
1つ目は、データ分析機能。「いつ」「どの場所」の会話が活性化しているかを定量化できます。複数の期間を比較する機能を使うと、たとえば「コミュニケーションスペースにコーヒーマシンを新設した前後で、その周辺の会話量に変化はあったか」や「社内イベントの開催前後でオフィス全体の会話量は増加したか」といったことを検証可能です。
これまでは、アンケートをもとにした効果検証が主でしたが、Bamielを活用すれば、定量的に評価できるようになります。
水本:もう1つは、デジタルサイネージの機能です。計測した空間の会話量をヒートマップ形式でリアルタイムに表示できます。また、ヒートマップの状態に合わせてサイネージを切り替え、その場の状況に合わせた会話のネタを提示することも可能です。
たとえば、盛り上がっているときは新しい雑誌の入荷のお知らせを、そうでないときにはクイズを表示するなど、タイムリーな会話のネタを提供します。ほかにも、仕事に集中したい人であれば、会話量が少ない静かなスペースを探すという使い方もあるでしょう。
——Bamielを今後どう展開していきたいと考えていますか?
水本:まずはオフィスでの事業展開をより広げていきたいです。
加えて、2つの展開を考えています。
1つはオフィスよりも賑やかな空間での展開。たとえば展示会やイベントなどが挙げられます。
もう1つは屋外です。当社は「プロジェクトドリトル」という生物のコミュニケーションを分析するプロジェクトも進めています。たとえば山の中にBamielを置くことで、「この辺にクマがいるぞ」や「絶滅危惧種がたくさんいるから、このエリアを保護しよう」といったことが分析できるのではないかと考えています。
このように、オフィス以外のシーンにもBamielを展開し、改善を重ねながら事業を広げていきたいです。