なぜ、女性に逆恨みを?何でも人のせいに?

私から見ると、対馬容疑者の事件直前の行動や供述にはパラノイア感の特徴が見て取れます。まず、女子大学生を襲った理由について、大学のサークルや出会い系で出会った女性に無碍にされた経験があり、「勝ち組っぽい女性」への復讐というニュアンスを語っているようです。女性や幸せそうな人たちへの歪んだ劣等感や恨み、敵意も述べられているようです。

また、事件直前には新宿区のコンビニで酒を盗み、輸入食品店でつまみ類を万引して警察の厄介になっています。ここで、警察に連れられて帰宅した後、万引を通報した女性店員への報復のために凶器を持ち小田急線に乗り込んでいます。結果的に、食品店ではなく車内で凶行に及んだわけですが、盗みや万引への反省の色は微塵も感じられません。全てを人のせいにしているように見えるのは私だけではないでしょう。

抑うつ感に耐えられなかった?コロナ禍の影響は?

さらに、凶器となった牛刀は2年前に自殺するために購入したと述べているようです。自殺を考える背景の多くは、極めて重たい抑うつ感に苦しむ経験があります。自身の境遇について、相当苦しんだ時期もあったようです。しかし、何かのきっかけで人のせいにすることが癖になり、パラノイア感を強めて今回の凶行に及んだのでしょう。

なお、対馬容疑者は善悪の区別がつかない意識状態にも陥っていたようです。これはコロナ禍の影響で仕事を失いやすい派遣・バイトという立場も影響していたのかもしれません。社会との接点が狭まると、社会的な善悪の枠組みを見失いやすいからです。

また、脳がコロナ禍に翻弄される日々に悲鳴を挙げていたのかもしれません。被害者に耐え難い恐怖や絶望感を与えた対馬容疑者の行為は許しがたいものですが、コロナ禍の社会的影響が拡大する中、防ぐ施策はなかったか検証する試みも必要かもしれません。コロナ禍が続く中、模倣犯を含めて第2第3の事件が起こることも心配です。