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宿主RNAと寄生RNAの耐性獲得競争がはじまった
寄生RNAとの耐性獲得競争は宿主RNAを異なる種にわけた

宿主RNAと寄生RNAの耐性獲得競争がはじまった

物質から生命の進化を可能にしたのは「寄生体」との共進化だった
(画像=宿主の変化により寄生体αは複製できなくなったが寄生体βに変異することで宿主の耐性をすり抜けた。しかし宿主は再度変異して寄生体βに対する耐性を獲得した。このような繰り返しが延々と続く/Credit:東京大学、『ナゾロジー』より引用)

試験管内に生じた小さな異変、新型の寄生RNAの誕生した理由を研究者は探りました。

そして驚きの結果が明らかになります。

なんと、これまで寄生されるがままだった宿主RNAが変異を起こし、既存の寄生RNAが使えないような複製酵素をコードするようになっていたのです。

このままでは寄生RNAは増殖できず、培地の継代ごとに数を減らして、いずれは死に絶えてしまうはずでした。

しかし寄生RNAもまた変異を起こし、宿主RNAの耐性に対する耐性を獲得し、再度、増殖できるようになっていたのです。

新型寄生RNAの出現は、耐性と耐性がぶつかり合う終わらない競争が分子の自己複製系という非生物の世界でも開始されたことを意味していたのでした。

寄生RNAとの耐性獲得競争は宿主RNAを異なる種にわけた

物質から生命の進化を可能にしたのは「寄生体」との共進化だった
(画像=熾烈な耐性獲得競争の結果種がうまれた/Credit:東京大学、『ナゾロジー』より引用)

世代を超えた絶え間ない耐性獲得ゲームが続き、生存競争が熾烈さを増していくなかで、少しでも優位を占めようとした宿主RNAが複数の異なる系統に分岐しはじめたのです。

これが分子世界における「種」の誕生でした。

種の誕生は宿主RNAの基本バリエーションを増やしただけでなく、寄生RNAもまた宿主に対応するように系統を多様化させていきました。

そして世代を重ねるごとに枝分かれは加速し、さらに数多くの種がうまれたのです。

そういう意味では、この自己複製システムにとって、寄生RNAの存在は種の誕生の出発点として必要不可欠な存在だと言えるでしょう。

現実の生物の世界においても、新たな種の出現においてウイルスは重要な働きをしていることが知られています。

通常の進化は既存の生物の既存の要素(体の大きさや手足の長さ)を強めたり弱めたりすることで発生しますが、ウイルス感染によって生じる進化は一種の劇薬であり、元となる生物がこれまで全く持っていなかった要素を追加し、外見や身体機能を劇的に変化させます。

有名な例では「胎盤」の獲得があげられます。

それまで陸上動物は卵生でしたが、ウイルス感染によってもたらされた変異は、哺乳類の祖先にこれまで全く要素がなかった「胎盤」を持たせ、胎児を子宮で育てることを可能にしました。