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原因菌を超えて原因物質を探る
腸内細菌を甘く見てはいけない

原因菌を超えて原因物質を探る

「放射線に強い人体」の原因物質が判明 特殊な腸内細菌バランス
(画像=なぜプロピオン酸が放射線から幹細胞を守るのかまではわかっていない / Credit:wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

しかしハオグオ氏はまだ満足しません。

なぜなら原因菌は確認したものの、原因物質はまだみつかっていなからです。

原因物質がみつかれば、放射線治療の副作用軽減薬や放射線耐性薬になる可能性があります。

そこでハオグオ氏は耐性付与菌が生産する物質を1つずつ抽出し、どの物質が放射線耐性に影響しているかを、再びマウスに対する放射線照射実験で確かめました。

結果、プロピオン酸とトリプトファンの分解産物(I3AとKYNA)に耐性付与効果が確認されました。

プロピオン酸はお菓子などの保存料として使われている添加物として知られており、取り過ぎが肥満や糖尿病の悪化につながるとされています。

またトリプトファンは必須アミノ酸の1つとして知られています。

腸内細菌を甘く見てはいけない

「放射線に強い人体」の原因物質が判明 特殊な腸内細菌バランス
(画像=腸内細菌は精神や身体の健康などあらゆる部分に影響する / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究によって、特定の腸内細菌が生産する物質によって、放射線耐性が得られることが明らかになりました。

現時点ではプロピオン酸やトリプトファンの分解産物がどのようにして幹細胞を活性酸素から保護するかの分子メカニズムはまだわかっていないものの、放射線被ばくの治療薬開発に有望な標的となると考えられます。

今後も、様々な生理的な効果と腸内細菌の関係が解き明かされていくでしょう。

放射線耐性まで関連してくるとなると、胃腸の健康には、より注意していきたいところですね。


参考文献

sciencedaily

, science


提供元・ナゾロジー

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