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腸内細菌がなぜ放射線耐性をうみだすか
特殊な腸内細菌バランスはヒトにも放射線耐性を与える
腸内細菌がなぜ放射線耐性をうみだすか

(画像=腸内細菌は幹細胞を防御する力がある / Credit:SKIP、『ナゾロジー』より引用)
放射性耐性にかかわる菌類を調べ終えたハオグオ氏らは次に、マウスの体で何が起きているかを確かめることにしました。
通常、致死的な放射線はDNA直接破壊する以外に、細胞内部に高エネルギー分子(活性酸素)を生じさせ、これらの活性酸素もまた、DNAを損傷させる働きを持ちます。
しかし調査の結果、ラクノスピラをはじめとする20種類の耐性付与菌をもつマウスは、害となる活性酸素の生産が幹細胞(特に血液幹細胞や脾臓幹細胞)で抑えられていることが判明します。
私たちの体は毎日古くなった細胞を破棄すると同時に、各臓器に存在する幹細胞が新しい細胞をうみだすことで維持されています。
そのため母体となる幹細胞のDNAを保護できれば、放射線や活性酸素によるダメージを最小限に抑えることが可能となります。
問題は、同じような仕組みがヒトでも働くかです。
特殊な腸内細菌バランスはヒトにも放射線耐性を与える

(画像=特殊な腸内細菌バランスは人間に対しても放射線耐性を授ける / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)
腸内細菌による保護がヒトでも起きているか?
それを確かめるには、ヒトに放射線を浴びせるしか方法はありません。
そこでハオグオ氏は放射線治療を受けているがん患者に着目しました。
放射線治療はがん化した部分を放射線の集中照射で焼き殺す治療ですが、放射線が強く当たる付近では、正常な組織もダメージを受けてしまいます。
ハオグオ氏はこの副作用の現れやすさや現れにくさが、マウスの生存率のように、患者個人の腸内細菌に影響を受けている可能性があると考えたのです。
早速ハオグオ氏は患者の糞便を回収し腸内細菌を調べました。
結果、放射線治療の副作用の低いひとほど(耐性があるヒトほど)、マウスで発見された耐性付与菌が多く存在していることがわかりました。