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じつは「副業を事業所得として申告」するのは、現状でもほぼNG
「副業赤字で節税」のスキームが問題視された?
じつは「副業を事業所得として申告」するのは、現状でもほぼNG
今回の改正案を見て「大増税だ、ふざけるな!」と怒りたい気持ちはよくわかります。もちろん筆者も増税はイヤです。
ただ、今回の改正案以前に、そもそもの問題として「副業を事業所得として申告すること」は現状でもほぼNGになっていることをご存知でしょうか。
さきほども触れましたが、事業所得と雑所得の判断基準は「事業と認められるか否か」です。副業者の場合、この基準が非常に厳しいといわれています。
過去には「副業収入が事業所得と認められるか」の基準が最高裁判所で示されたケースがあり、判決では以下の基準をクリアすることが必要だとしています。
事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得
(引用:最高裁判所HP)
ムズかしい言い回しですが、過去に副業収入の事業所得と雑所得の区分をめぐって争われたほかの裁判などの内容なども踏まえ、筆者なりに解釈すると「片手間の仕事(たとえばスキマ時間だけ)ではなく本業と同じくらいのリソースを割いて、本業に並ぶような収入を手にしており、社会的にも認知される仕事」によって得られた所得が「事業所得」といえるのでしょう。
そう考えると、いわゆる「副業」の大半は事業所得にあてはまらないといえそうです。
事業所得にあてはめるなら、「複業」「パラレルワーク」と呼ばれるような、複数の仕事に同じくらいのリソースを割いてとりくむ働き方になるでしょう。ただし、くわしくは後述しますが、「300万円」の基準ができたことで複業者・パラレルワーカーにも増税の可能性が出てくるかもしれません。
「副業赤字で節税」のスキームが問題視された?
副業収入を事業所得で申告するのは、大前提として難しいことをご理解いただけたかと思います。しかし実際は、副業を事業所得として確定申告している人が多いですよね。これはどういうことなのでしょうか。
ハッキリ言ってしまうと、多くの場合ではルール違反の状態で確定申告をしていることになります。
確定申告は、自分で税額を計算して納付するシステムです。しかし、間違った知識のまま確定申告することも可能で、しかも税務署は「所得の区分がルール違反ですよ~」とは教えてくれません。
間違いが発覚するのは、税務署がいわゆる「税務調査」にやって来たときです。「みんなが間違えているなら、ルールのほうがおかしいのでは?」「もっと分かりやすく情報発信をしてほしい」という気持ちは分かりますが、税務署は私たちの言い訳を聞いてはくれないでしょう。
また、有識者からは「副業赤字で節税を試みるスキームが問題視されたのでは?」という指摘もあります。
これは、副業収入を事業所得として確定申告した場合、事業で発生した赤字をほかの所得で得た黒字と相殺できる「損益通算」という仕組みを利用したスキームです。会社員の場合、給料への課税額が決まる基準となる「給与所得」とも相殺できるので、「副業で赤字を出し、それを給料の黒字と損益通算して手取り額を増やす」ということができてしまうのです。(そもそも損益通算をするには事業所得として認めてもらう必要があり、そのハードルは極めて高いのですが……)
このスキームはマネー系のインフルエンサーや税理士の発信で有名になり、手を出す人が多かったのでしょう。そのため今回の改正案でにて「300万円」というラインを設定することで、強引な赤字との損益通算をキッパリと否定した、とも考えられます。