財産の贈与には贈与税が課されます。年間110万円の基礎控除がありますが、最高税率は55%と高く、人によっては納税資金を確保するのが難しい場合があります。今回は贈与税の計算方法や税金を軽減する特例措置、不動産を譲り受ける際の注意点を解説します。

目次
贈与にかかる税金はいくら?
長期間の基礎控除額で贈与税が抑えられる?

贈与にかかる税金はいくら?

贈与で発生する税金の計算方法。不動産の場合は評価額が必要
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

預貯金や不動産、有価証券などの財産を個人から譲り受けた場合、受贈者(贈与を受けた人)には「贈与税」の支払い義務が生じます。贈与税の基本的な計算方法を確認しましょう。

贈与税の基本的な計算方法

贈与税は、贈与者ではなく、受贈者が支払う税金です。贈与税の課税方法には、暦年課税制度と相続時精算課税制度があり、相続時精算課税は一定の条件を満たした場合にのみ選択ができます。

まずは、贈与税の計算の基本となる「暦年課税」を押さえておきましょう。暦年課税とは、その年の1月1日~12月31日に贈与された財産の合計額に税金を課す方式です。

受贈者は翌年の2月1日~3月15日に贈与税の申告を済ませ、納付しなければなりません。暦年課税には、年間110万円の「基礎控除」があり、以下の計算式で算出します。

  • 贈与税=(贈与額-110万円)×税率-控除額

また、安く不動産を手に入れた場合(低額譲渡)、当該財産の時価と譲渡価格との差額が贈与とみなされます。譲受人には「贈与税」、譲渡人には「みなし譲渡所得税」が課せられる点に注意しましょう。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

課税価格によって最高55%の税率

贈与税は、課税対象の額が一定額を超えた場合に、超過分にのみ高い税率を課すのが特徴です。この方法は「超過累進課税」とよばれ、相続税や所得税の計算にも使われています。

贈与税は、「生前贈与による相続税の課税逃れ」を防ぐのが目的です。超過累進課税では、財産が多い人ほど納税額が高くなるため、担税力に応じた税負担が公平になり「資産を再分配」できるというメリットがあります。以下は、一般贈与財産用(一般税率)の速算表です。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%-
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

祖父母からの贈与、成人の親子間の贈与

贈与税は、贈与者と受贈者の関係性によって、「一般贈与」と「特例贈与」に区別されます。以下の条件に当てはまる場合は特例贈与とみなされ、特例贈与財産用の特例税率が適用となります。

  • 受贈者:贈与を受けた年の1月1日において18歳以上
  • 贈与者:直系尊属(父母や祖父母など)

以下は、特例贈与財産用(特例税率)の速算表です。特例贈与は一般贈与よりも、税率が低めに設定されているのがわかるでしょう。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%-
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

長期間の基礎控除額で贈与税が抑えられる?

贈与で発生する税金の計算方法。不動産の場合は評価額が必要
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

子どもや孫に財産を贈与する人であれば、少しでも贈与税を抑えたいと思うのは当然です。基礎控除の範囲内で毎年贈与を続けた場合、贈与税0円は実現できるのでしょうか?

毎年110万円までの贈与を続けた場合

1月1日~12月31日の間で110万円以下の贈与をすれば、贈与税はかかりません。実際、贈与額を毎年110万円以下に抑えながら、非課税で財産贈与をする人は少なくないようです。

ただし、毎年同じ金額を特定の人に贈与し続けていると、「定期贈与」とみなされるケースがあります。定期贈与とは、定期金給付契約に基づき、定期的に贈与(給付)を行うことです。

例えば、受贈者と贈与者との間で「20年間にわたり、毎年100万円の贈与を受ける」という約束をした場合、受贈者は「定期金給付契約に基づく定期金に関する権利」の贈与を受けたとして、贈与税の課税対象となってしまうのです。

定期贈与ではなく暦年贈与であることを証明するには、贈与のたびに「贈与契約書」を交わし、契約書に基づいた贈与を行う必要があります。

なお「令和4年度税制改正大綱」おいては、限度額まで税負担がないことに対し「非課税措置のあり方を見直す必要がある」との言及がありました。

資産の再分配機能の確保や早期の世代間移転などが目的で、今後、最終的な税負担は、諸外国のように贈与税と相続税の一本化へと進むでしょう。

参考:No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

基礎控除額の注意点

基礎控除額の110万円は、受贈者1人あたりの控除額です。例えば、受贈者が祖父から150万円、父から50万円の財産贈与を受けた場合、合算した贈与額から基礎控除額を減算します。贈与1件ごとに控除が適用されるわけではない点に注意しましょう。

この場合、課税対象となるのは、90万円(200万円-110万円)です。基礎控除後の課税価格が200万円以下なので、10%の税率がかかります。従って、贈与税額は、9万円(90万円×10%)となる計算です。

一括で生前贈与したい場合は?

生前に一括贈与をすると多額の贈与税がかかり、受贈者は納税資金の確保ができない可能性があります。もし、受贈者(子や孫)が18歳以上で、贈与者が60歳以上の父母または祖父母である場合は「相続時精算課税」の選択が可能です。

相続時精算課税とは、一言でいえば税金の支払いを先延ばしできる制度です。2,500万円の特別控除額があるため、贈与時は税金の支払いが大きく軽減されるでしょう。

贈与者が亡くなったときには、相続財産の価額に本制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

なお、相続時精算課税を選択すると、その後の贈与のすべてに本制度が適用され、暦年課税への変更はできません。

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁