PHAでのトレーニング強度の考え方
筋発達と体脂肪の減量を同時に行うための運動強度は、当然、高くなくてはならない。今回はそのためのトレーニングとしてPHAワークアウトを紹介するのだが、PHAワークアウトでは心拍数が増加し、しかも大量の酸素を血中に溶け込ませるために呼吸も大きくなる。肺は猛烈に働かなければならず、心臓も血液を強く押し出す必要がある。
自分は高強度トレーニングを行っているという人たちの中には、実は自分が思っているほど強度は高くなかったというケースがある。猛烈にきつく感じるトレーニングだから高強度だと判断するのではなく、最大心拍数の70〜75%を超えているかどうかで判断するべきだろう。
何度も繰り返すが、筋発達と体脂肪減量の両方を実現するための運動は高強度だ。実際、通常のウエイトトレーニングでこれを実現しようとすると、運動強度は「凄まじく」高くなければならない。おそらくそれは大半の人にとっては継続できないレベルの高強度である。
しかし、PHAは違う。PHAワークアウトなら、ウエイトトレーニングで求められるほど強度を高めなくても、筋量アップと体脂肪減量の2つを同時に叶えることが可能であり、しかもPHAワークアウトは決して一部の人にしか行えないようなワークアウトではないのだ。もちろん、PHAワークアウトは簡単ではないし、楽でもない。ただ、最大挙上重量を使って追い込むようなやり方とは異なり、種目の組み合わせ方や種目の順番、サイクルトレーニングのように連続して行うなどのポイントをしっかり押さえれば、2つの目的を同時に叶えることが可能になるのだ。
通常のワークアウトを超高強度で行った場合、対象筋を限界まで追い込んだら、その時点でワークアウトを終了せざるを得なくなる。例えば、選択した種目がスクワットである場合、大腿部が疲労困憊したら、どれだけ他の部位が疲労していなくてもスクワットを継続して行うことはできないのだ。そんなことは当たり前のことだし、対象筋が追い込まれたならそれでいいではないかと思うかもしれない。
しかし、私たちが今求めているのは、何度も繰り返すが、筋発達と体脂肪減量の両方を実現するためのトレーニング法である。特定の部位を追い込んで、その部位を発達させるだけでいいなら、何もPHAワークアウトを学ぶ必要などないのだ。
対象となる部位がこれ以上の筋収縮が行えなくなるほど疲労したということは、その部位に筋収縮を停止させるほどの乳酸が蓄積したということだ。しかし、PHAワークアウトの場合、特定の部位に乳酸を蓄積させることはない。なぜなら、PHAは体の隅々にまで血液を行き渡らせることにより、乳酸などの老廃物の除去も全身を通して行われるからだ。だから、特定の部位だけが疲労することは起きず、それによって種目の継続が困難になるという状況にもならないのだ。
休息時の基礎代謝を高めるPHA
強度の高い運動を行うと、体はその強度に適応しようと反応を示す。今の体に備わっている能力で対応できる強度なら、体は特に適応するための反応を示さなくていいのだ。つまり、体に適応のための反応を起こさせるには、常にひとつ上のレベルでの運動を行うことが必要になる。PHAワークアウトはまさにそれである。
というのも、PHAワークアウトで猛烈な刺激を受けた全身の筋肉は、ワークアウト終了後から栄養と休養を求める。トレーニーは筋肉の要求に応え、栄養と休養を供給する。それによって全身の筋肉の発達反応が起きる。ここまでは高強度でウエイトトレーニングを行ったときと同じなのだが、PHAの場合、休養中でも基礎代謝が高まり、脂肪燃焼活動が積極的に続けられるのだ。だからPHAワークアウトは筋発達と同時に脂肪燃焼を促すことができるトレーニング法だと言われているのである。
基礎代謝がそんなに高まるのはなぜか。その理由は、PHAワークアウトでもたらされる心拍数の高さに起因する。もちろん、心拍数を上げるだけなら有酸素運動を行うだけでも可能だが、PHAは筋肉を刺激しつつ、心拍数を猛烈に高めるため、有酸素運動と無酸素運動のどちらか一方だけを行ったときとは体が受ける衝撃の度合いがまるで異なるのだ。