完璧な体をつくるには、完璧な絞りと鍛え抜かれた筋肉が必要だ。そのために実践できるのが「ペリフェラル・ハートアクション・ワークアウト」、すなわちPHA法だ。このトレーニングテクニックが具体的にどのようなもので、どうして効果があるのかを今回はじっくり解説していきたい。

文:Raphael Konforti MS, CPT
翻訳:ゴンズプロダクション

筋肉があり、体脂肪がそぎ落とされ、彫刻像のようなシルエットを持つ肉体は、トレーニングを知らない人たちからも芸術的と受け止められる。昔のボディビルダーは、芸術的な肉体をつくるためにまずは筋肉を肥大させた。その後、体脂肪を減らすために減量食に切り替え、有酸素運動をたくさん行った。その道のりは決してたやすいものではなく、ゴールにたどり着くまでに何度も失敗を経験し、挫折を繰り返した。そこから這い上がり、さらに挑戦を続けた者だけにゴールはあった。生半可な意思ではとうてい叶わない夢だったのである。

もちろん、昔のやり方だけがかっこいい体をつくるための方法ではない。時代は流れ、技術が進化し、多くの研究が行われてきた。新しい方法はきっとある。例えば筋量を増やすことと体脂肪を減らすことを同時に叶えるようなやり方だ。今回紹介するペリフェラル・ハートアクション・ワークアウト(PHAワークアウト)はまさにそんな夢のようなトレーニング法なのだ。どうしてか? それは、PHAワークアウトがウエイトを負荷にして筋肉を刺激し、それが同時に体の代謝機能を促すやり方だからだ。つまり、筋肉を発達させながら体脂肪を燃焼させることができるのだ。

PHAとは

そもそもPHAとは何なのか。PHAのP(ペリフェラル)には末梢という意味がある。H(ハート)は心臓であり、A(アクション)は動きだ。つまり、体の末梢部位にまで血液を行き渡らせるように心臓を動かすことがPHAである。心臓のポンプ力を高め、ポンプによって押し出される血液を特定の部位だけでなく、全身の隅々にまで行き渡らせる。それを可能にするワークアウトがPHAワークアウトなのだ。ところで、初級者トレーニーは全身を1回のワークアウトで刺激するやり方からスタートし、基本的な種目をマスターしながら基礎的な筋力を身につけていくはずだ。その後、個別の筋肉を刺激するワークアウトに内容を変え、特定の部位を個々に発達させていく。

例えば胸だけを刺激するワークアウト、背中だけのワークアウト、脚のワークアウトというようにだ。一般的な部位別のワークアウトは、対象筋をダイレクトに刺激する複数の種目で構成されている。そのようなワークアウトではひとつの種目を1セット行ったら休憩し、2、3セットを完了したら、さらに休憩して次の種目を同様にして行っていく。そうして最後の種目の最後のセットを終えたらワークアウトが終了する。

一方、PHAワークアウトの場合はそれとは全くやり方が異なる。基本的なPHAでは、上半身と下半身の種目が交互に組み込まれ、それにより全身の血流が活発になって、体の隅々にまで血液が送り込まれるのだ。特定の部位にのみ血液が集中して流れ込む典型的な部位別ワークアウトとは、この点において全く異なるということをまずは理解しておこう。

全身をターゲットにするPHA

部位ごとのワークアウトでは、例えば胸だけをダイレクトに刺激する種目が多数行われる。それによって胸筋には大量の血液が送り込まれ、胸筋はパンプアップする。血液中には酸素やエネルギーの元になるブドウ糖をはじめ、その他の栄養素が数多く含まれているため、胸筋は刺激を受けながら、同時に発達に必要な材料が運び込まれる。

一方、PHAでは全身の隅々にまで血液が送り込まれるため、全身に発達のための酸素や栄養が運搬される。ただし、特定の部位にだけ血液を送り込むのと違い、全身に血液を行き渡らせるためにはそれだけ心臓のポンプ力を高めなければならない。だから行うべきトレーニングの仕方が部位別ワークアウトとは異なるのだ。

心臓から離れている下半身への血流を増やすには、より強く心臓のポンプを働かせる必要がある。また、下半身の筋肉は非常に大きいので、酸素も大量に血液中に溶け込ませておく必要がある。だから、PHAを使った下半身のワークアウトでは心拍数を高め、呼吸数が増える内容のやり方が必要になるのだ。

上半身と下半身を交互に刺激するPHAワークアウトは、上半身と下半身に血液を行ったり来たりさせる。その際には心臓に戻された血液が新たに酸素を得て再び送り出され、それが繰り返されることで、全身の隅々にまで発達に必要な材料が運び込まれるのだ。一般的な筋力トレーニングとPHA法の大きな違いはそこにある。対象部位のみをターゲットに血液が送られるのか、あるいは心臓のポンプ力を高めて全身をターゲットにするかだ。

ところで、どうして酸素濃度の高い血液が筋肉に必要なのか。それは、筋肉にとって主要なエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)を継続的に供給するためだ。ATPには酸素が必要であり、ATPが絶えず得られれば、筋収縮を継続することができるのだ。

トレーニーのフィットネスレベルによって差はあるが、酸素が大量に溶け込んでいる血液を全身に送り込むには心臓のポンプ力は強いほうがよく、1回の拍動で大量の血液を送り出すことができる人は、効率よく全身の筋肉をパンプアップさせることができるのだ。

例えば傾斜角度をつけたトレッドミルを歩いたり、軽いウエイトを上げ下ろししたりする運動は低強度運動だ。低強度運動にセット間休憩を長く入れるようなトレーニングのやり方は、心臓のポンプ力を強めなくても、十分に酸素を含む血液を普通に送り出すだけで、筋肉は収縮を繰り返すことができるし、これだけでも心拍数は上昇する。

しかし、心拍数が増加しても、血流に勢いはない。そのため、発汗量もさほど増えないし、息が上がることもなく、苦しさも生まれない。体を動かしてただ気持ちよくなるという目的のためならそれでも構わないが、私たちが望むのはそういったことではない。私たちは筋発達と体脂肪減量の両方を同時に行おうとしているのだ。