目次
3.キーマンが語るマフラー作りのノウハウ
4.「気持ちイー!」とは何か。ズバリ聞いてみました
3.キーマンが語るマフラー作りのノウハウ
「気持ちイー!」をキーワードにこだわりのマフラーを生み出し続けるSP忠男。同社常務の大泉さんは、30年以上にわたってSP忠男のマフラーの開発を担ってきたキーマンです。
「マフラーの性能は、基本的に“長さ(管長)”と“太さ(パイプ径)”の組み合わせで決まります。近年のモデルでは排気ガスを浄化する“触媒”も重要な要素となりますが、“長さ”と“太さ”がマフラーの性能を決めていることには変わりありません」
とは大泉さん。さらに近年では、マフラーの全長が短いショートタイプのマフラーの人気が高いそう。MT-09やMT-07の人気のスポーツモデルでは、サイレンサーエンドがスイングアームピボット(付け根)付近で終わるショートマフラーを純正でも採用していますが、リプレイスマフラーでもやはりそうしたスタイルが人気だといいます。
しかし単純に全長が短いマフラーを作ってもSP忠男が提唱する「気持ちイー!」は実現できないとのこと。というのも、MT-09やMT-07はそもそも欧州市場を念頭に開発されたモデルであり、大泉さんたち開発チームによれば、エンジンやマフラーの特性は日本のストリートではギクシャクしてしまう部分もある、そう分析しています。
実際、80km/h-100km/hのような速度域で走るヨーロッパのワインディングと、タイトかつ制限速度が低い日本のワインディングでは巡航速度にも大きな違いもあります。想定するステージが大きく異なるのですから、そうした車両を日本の市場にそのまま持ち込んでもフィットしない部分が出てくるのは仕方のないところ。そこでSP忠男のスタッフたちは、数ヶ月に渡って街中からワインディング、高速道路まで入念な走り込みを重ねることで日本のストリートに合わせた特性を作り込んでいくのです。
4.「気持ちイー!」とは何か。ズバリ聞いてみました
それを踏まえた上で、SP忠男が提唱する「気持ちイー!」とは何か。大泉さんにズバリ聞いてみました。
「心地よさと爽快感、それが私たちが打ち出す『気持ちイー!』の正体です。
どんなモデルでも楽しく走るにはライダーとバイクの信頼関係が大切なんです。たとえば『このバイクはちょっとおっかないな』とライダーが構えてしまうと、走りを楽しむことはできません。それはつまり、ライダーとバイクの間に信頼関係が築けていないということ。
でも逆に『このバイクは扱いやすくて乗りやすいな』とバイクとの信頼関係が築ければ、ライダーにとって大きな安心感につながります。つまり結果的に楽しく乗れるようになるんですよ。私たちがマフラーを作るときには、バイクがライダーを裏切らない、そんな特性を実現することをいつでも念頭においているんです」
しかし、作り込んだマフラーをライダーたちへ、どうやってアピールするか。長年にわたって試行錯誤を続けてきたそう。
「たとえば、街中など常用域での乗りやすさを重視したマフラーを作っても、『低速重視のマフラーだ』なんて言われたりしてしまうんですよ。でも実際はそうではなく、徹底した走り込みで低速域や中速域をしっかり作り込みながら、高速域の性能もしっかり出しているんです。その逆も然りでトップエンドのパワーを売りにすると、低速域で乗りにくいマフラーというように捉えられてしまいがちです。だからSP忠男では、もっとわかりやすい言葉を使って私たちの作るマフラーの良さを伝えたかった。
バイクとの信頼関係も構築できて、純正マフラーよりも面白く、もちろん胸のすくようなサウンドだって楽しめる。その特性を直感的にわかりやすく伝える言葉として生まれたのが『気持ちイー!』だったのです。
実はこれって鈴木忠男が現役時代からことあるごとに口にしていた言葉なんです。『走ってて気持ちいい方がイイに決まってるじゃん!』ってね」