前回の 少子化対策と女性活用はカードの表裏だ に続き、今回は「少子高齢化による労働人口不足」の問題について考察してみたい。筆者としては、前回は「子育てを終えた女性の活用」だったのに対し、今回は「若者世代」の活用なので、「似て非なる」話としてお楽しみいただければ、と思う。
若い世代を早期に労働人口に組みこむ
今、少子高齢化により労働人口の比率が下がることが懸念されている。年金を受給できる年齢が引き上げられ、若者世代の負担が上がる可能性もある。この問題に対処する方法はないのだろうか?
一つ案がある。「学生をより早く社会に出し、労働人口に組みこむ」ことだ。そのための手段との一つとして、高大(時短)一貫校の設立を提案したいと思う。
現在、学生が社会人になるルートは主として①高卒、②高専卒、③専門学校卒、④短大卒、⑤四大(四年制大学)卒だ。これらのルートの教育期間は短縮できないものだろうか?実は、筆者は現在の中等~高等教育の中には無駄が潜んでいると考えている。
中学までの義務教育は社会人として最低限の知識を身に着けるためのものだが、高校以後については一般教養と専門教育に分かれていく。筆者は、「一般教養の授業内容が、高校と大学で重なっているのではないか?」と考えている。大学の立場で言うと、「高校までに最低限の知識を身に着けていない学生に対応する必要がある」のだろうけれど、一方で学生から見て「大学の一般教養は高校までに得た知識のおさらい」と感じることも多々あるはず。それなら最初から高校大学一貫の学校を作り、高校と大学の一般教育を統合して必要な教育を無駄なく履修させることを考えても良いのではないだろうか?
この案は、元々医学部や薬学部など6年制の大学について考えたものだった。大学にもよるだろうが、仮に6年間のうち1年分を一般教養に充てているとしたら、「高校3年間+大学1年間」の一般教養を「合わせて3年間」で済ますことはできないだろうか?と考えた。この考え方が成立するのであれば、「一般教養3年+専門教育5年」の8年制の高校・大学(時短)一貫校ができるはずだ。これを本稿では「高大(時短)一貫校」と呼ぶこととする。
現在も「高大一貫教育」を実施している学校はある。筆者はいくつかの高大一貫校の情報を集めてみた。例えば早稲田大学は関連する高校に大学の教授が大学の講義に準じた授業を提供する等の取り組みをしており、興味深かった。大学受験の必要が無い生徒たちに独自の授業を提供することはとても有意義だと思う。ただ、それは教育期間の短縮を考慮したものではない。現行の制度の枠の中で実施しているのだから、当然のことだ。
受験生の立場からは
受験生から見れば、高大一貫校に入学することで「大学受験をスルーできること」は大変な魅力であり、近年は私大の系列の高校の人気が高まっている。更に、一貫校を選ぶに際してはより大きな要因がある。それはエスカレーターの先にある大学に「就職予備校としてアドバンテージがあること」だ。現在は私立であれば早慶、MARCH、関関同立などのブランド校がそうした価値を保持している。筆者は、こうしたブランドによるアドバンテージを持たない学校でも高大(時短)一貫化で「大学受験をスルーするメリットを得ること」に加えて、「授業の無駄を省き、効率良く専門知識を学ぶ」という高等専門学校に近いコンセプトで企業からの評価を高めること、ひいては就職予備校としての価値を高めることは可能だと考えている。
高大(時短)一貫校の卒業生が生涯賃金の面でこれまでの四大卒と比較して不利になる可能性は別途議論が必要だが、富裕層を除く受験生にとっては1(~2)年の時短で学費の負担が軽減され、1年でも早く働けるようになるのは大きなメリットだと考えられる。特に奨学金に頼らざるを得ない家庭にとっては大きなメリットがあるだろう。